“環境”を競争力のきっかけに、セイコーエプソンが考える日本の製造業の勝ち筋:製造業は環境にどこまで本気で取り組むべきか(2/5 ページ)
大手精密機械メーカーとして、環境についての世界的な要求の高まりを事業成長の機会として生かそうとしているのが、セイコーエプソンだ。「環境ビジョン2050」を掲げる同社の考え方と取り組みについて、セイコーエプソン 地球環境戦略推進室 副室長の木村勝己氏に話を聞いた。
世の中が変わる方向性にいち早く準備をしておく
MONOist 世界のエネルギーや資源の状況を見ると、企業として環境への対応を取り入れなければビジネスができない方向性に確実に変わっていくので、いち早く先回りして準備をしておくという捉え方なのでしょうか。
木村氏 その通りです。現在はこうした環境への取り組みは、コストアップになる場合が多くなかなか取り組みづらい状況があります。しかし、脱炭素や資源循環の動きが広がり定着していけば、そうではなくなります。
われわれは「環境ビジョン2050」を発表し、2050年には「カーボンマイナス」と「地下資源消費ゼロ」を達成することを掲げました。さらに、そこに向けた2030年目標を示し、2025年を最終年度とした中期経営計画「Epson 25 Renewed」でも「環境」を大きな柱の1つと置いています。こうした具体的な取り組みで先導し、脱炭素や資源循環についての機運を盛り上げ、これらが定着するまで頑張っていきたいと考えています。おそらく今は“生みの苦しみ”であり、一定のボリュームを超えれば一気に普及する環境ができると見ており、そこに向けて必要な手を打っていきます。
脱炭素、資源循環、顧客環境での環境負荷低減、環境技術開発の4つを推進
MONOist 具体的にはどのような取り組みを進めているのでしょうか。
木村氏 主に「脱炭素」「資源循環」「お客様のもとでの環境負荷低減」「環境技術開発」という4つの方向性で取り組みを進めています。「脱炭素」では、拠点の脱炭素化や再生可能エネルギーの活用、設備の省エネルギー化、温室効果ガス除去、ロジスティクスの脱炭素化やサプライヤーとの脱炭素条件を含めた契約などを進めています。
「資源循環」では、資源の有効活用を行うために、製品の小型/軽量化や再生材の活用などを進めています。また、生産ロスを減らすために最適な設計や生産工程の構築などにも取り組んでいます。さらに、商品の長期使用を促すため、リファービッシュ品(メーカー再生品)やリユースを推進しています。
「お客様のもとでの環境負荷低減」としては、エプソンの製品やサービスなどを通じた脱炭素化や資源循環への取り組みを行っています。製品の低消費電力化や長寿命化、消耗品や交換部品の削減、印刷のデジタル化、生産装置の小型化などを通じて、顧客が排出するCO2排出量を削減したり、使用する資源を削減したりする製品やサービスを展開していきます。
また、これらを実現するために「環境技術開発」にも力を入れています。紙の再利用を実現するドライファイバーテクノロジーの応用や、天然由来素材プラスチックの開発と活用、原料リサイクルの推進、CO2吸収技術の開発などに取り組んでいます。これら「脱炭素」「資源循環」「環境技術開発」の3つの取り組みに対し、2021〜2030年にかけて10年間で1000億円の費用投下を行う計画です。
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