固体潜熱蓄熱材で電源を安定化、多機能の超小型人工衛星「DENDEN-01」の全貌:宇宙開発(2/4 ページ)
関西大学、福井大学、名城大学、アークエッジ・スペースは、4者の共同研究グループで開発を進めてきた1Uサイズ(10×10×10cm)の超小型人工衛星「DENDEN-01」の特徴や開発の意義などについて説明した。
月着陸実証機「SLIM」と同じ太陽電池パネルを搭載
これまでのキューブサットは電源システムからの電力供給が安定しないことを前提に、搭載する機能を絞り込むことが一般的だった。しかし、電源温度安定化デバイスによってどのような状況でも安定して電力を供給できるのであれば、より多くの機能を搭載できるようになる。また、これらの機能を動作させるための電力を生み出すような太陽電池パネルも必要になる。
DENDEN-01では、シャープエネルギーソリューション製の変換効率が30%以上と高いIMM(逆積み格子不整合型)3J太陽電池パネルを採用している。これまで小型月着陸実証機「SLIM」などJAXAの宇宙機に採用されてきたが、民間宇宙機では初の事例となる。
運搬時には上面に折りたたんである3面の両面と、地球側に向くことを想定してる面を除く3つの側面に合計9枚のIMM3J太陽電池パネルを組み込んでいる。IMM3J太陽電池パネルからは最大16Vの電圧で発電を行えるが、合計9枚を配置することで衛星の姿勢に影響を受けることなく安定して電圧を生成できるような設計とした。
この他、DENDEN-01は、宇宙用としての軌道上特性評価を行うためにリコー製のペロブスカイト太陽電池も搭載している。衛星の傾きと照度に対しての発電量をモニタリングしながら、宇宙空間での耐久性を評価することになる。なお、実用的なペロブスカイト太陽電池の直列モジュールを用いた宇宙実証は国内初の事例になるという。
電源の安定化が衛星システム運用の自動化自律化につながる
多数の超小型人工衛星を打ち上げてさまざまなミッションを行う場合に課題になるのが、各衛星の運用計画だ。従来の衛星の運用計画は人手で行うのが一般的だったが、多くの衛星を扱うのであれば自動化自律化することが望ましい。そして、運用計画を自動化するためには、衛星の状態管理もモデルベースで推定できることが求められる。
名城大学 理工学部 准教授の宮田喜久子氏は、DENDEN-01の開発において、超小型人工衛星の状態推定をより高精度に行うとともに、この高精度な状態推定を基にした衛星模擬モデルを用いた数値最適化による運用計画立案を担当した。「電源温度安定化デバイスによって超小型人工衛星の電源システムを安定した状態にできることで、高精度な状態推定が可能になり、安全性の担保や効率的なミッションの実現を前提とした運用計画の立案につながった」(宮田氏)という。
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