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固体電子移動過程を直接観察できる結晶性ダブルウオールナノチューブを開発研究開発の最前線

東京理科大学は、2種類の配位子を有する環状の亜鉛錯体から、結晶性ダブルウオールナノチューブを開発した。電子ドナー分子をナノチューブ結晶内部に導入し、固体電子移動過程を直接観察できる。

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 東京理科大学は2024年6月6日、2種類の配位子を有する環状の亜鉛(Zn)錯体から、結晶性ダブルウオールナノチューブを開発したと発表した。電子ドナー分子をナノチューブ結晶内部に導入し、固体電子移動過程を直接観察できる。

研究の概要
研究の概要[クリックで拡大] 出所:東京理科大学

 研究では、アクリジン配位子(LA)とアクリドン配位子(LA=O)を含む環状のZn錯体[(Zn2+4(LA4(LA=O4]を合成。結晶化により二重壁構造の結晶性ナノチューブ([(Zn2+4(LA4(LA=O4n)の作製に成功した。チューブは柔軟かつ丈夫で、内寸は0.90nm×0.92nm。テトラチアフルバレン(TTF)やフェロセン(Fc)などの電子ドナー分子を溶解した液に7日間浸漬することで、ナノチューブ内部にTTFやFcを包摂できる。

 電子ドナー分子を包摂したナノチューブ結晶に固体酸化剤[Fe(H2O)6](ClO43を反応させたところ、ドナー分子の電子酸化による変色を確認。ナノチューブ結晶は電子酸化後も結晶状態を維持していた。

 X線構造解析を実施することで、電子ドナー分子の配向変化や水素結合の形成といった電子酸化反応前後における結晶構造の変化を明らかにできる。これにより、固体の電子移動反応の可視化が可能となる。

 非共有結合性ナノチューブ結晶では、電子や正孔を導入すると結晶状態が崩壊するため、電子移動反応の観察に用いることはできなかった。同手法により固体電子移動のメカニズムの解明が進み、電子機器や太陽電池など、さまざまなデバイスに活用されている電子移動材料への応用が期待される。

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