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NEO新城工場の立ち上げと同時にスマートファクトリーを実現、OSG流の大胆なDX推進工場見学レポート〜ものづくり最前線〜(1/4 ページ)

Koto Online編集長の田口紀成氏が、工場見学を通じて製造業DXの最前線に迫る本シリーズ。オーエスジーのNEO新城工場に伺い、同所の開設・運営に携わる第2製造部 部長の桝田典宏氏にご案内いただきました。

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Koto Online

本連載は製造業のDXに携わる人のためのメディア「Koto Online」に掲載された記事を転載しています。記事の情報は、Koto Online掲載時の2024年1月時点のものです。Koto Onlineは業界のトップランナーへのインタビュー等を通し、製造業の未来に触れられるコンテンツを発信しています。

 Koto Online編集長の田口紀成氏が、工場見学を通じて製造業DXの最前線に迫る本シリーズ。オーエスジーのNEO新城工場に伺い、同所の開設、運営に携わる第2製造部 部長の桝田典宏氏にご案内いただきました。

 オーエスジーは、世界32カ国※に製造、販売拠点を展開する、総合切削工具メーカーです。金属加工において、穴の内側にねじを刻むタップを柱に、エンドミル、ドリル、転造工具などを手掛け、創業製品のタップは世界トップシェアを誇ります。

※ MONOist編集注……2024年6月時点で33カ国に拡大している。

 NEO新城工場は、2020年5月に誕生した新たな生産拠点で、現場のノウハウとデジタル技術を融合し、さらなる効率化を実現しているのが特徴です。ここでは、桝田氏に工場のコンセプトやDX推進における取り組みなどについて、お聞きしています。


左より田口 紀成氏(コアコンセプト・テクノロジー)、桝田 典宏氏(オーエスジー)

多品種少量生産を担う国内マザー工場

田口氏(以下、敬称略) この度は、NEO新城工場にお招きいただきありがとうございます。こちらは、どういった役割を担う工場なのでしょうか。

桝田氏(以下、敬称略) NEO新城工場は東三河地区にある4工場の内の1つで、超硬ドリル、超硬タップ、ハイスドリル、ハイスエンドミルの製造に特化しています。11万2000m2の敷地面積に700人の従業員が勤め、月産70万本の生産能力、月当たりでは6000種類、8000ロットの生産能力を有しています。

田口 桝田さんは、どういった経緯でNEO新城工場の立ち上げに携わったのですか。

桝田 自己紹介も兼ねてお話しします。私は静岡大学工学部を卒業後、大手通信メーカー勤務を経て、メーカーでのモノづくりに携わりたかった思いをかなえるために、1997年にオーエスジーに中途入社しました。そして、穴あけ加工工具のドリルの設計・開発業務に8年間従事した後、トヨタ自動車エンジン生技部へ2年間出向し、エンジン生産にかかわる工具の原価低減に取り組み、帰任後は開発グループ係長として差別化新製品開発に注力しました。

 2009年から約10年間は米国シカゴにある海外現地法人OSGUSAへ出向し、セールスエンジニアとして現地営業マンの技術サポートを担当した後、Vice Presidentに就任しエンジニアリングとマーケティングを統括。2018年12月に日本へ帰任すると同時に、新城工場スマートファクトリー実証室(SFJ)室長に就任してNEO新城工場立ち上げプロジェクトをけん引し、2020年12月からはNEO新城工場の部長として、生産現場のDX施策を進めています。

田口 SFJ室長になったのは、こうした経験を買われてのことですか。

桝田 インダストリー4.0や将来を見据えた生産体制の増強、超多品種少量生産と生産体制のデジタル化を目的に、新工場建設の話が始まったのは、2018年2月のことです。12月にプロジェクトを主導するSFJが発足するとともに、室長に着任しました。私は工場のたたき上げ人財ではなく、工場のことはずぶの素人ですが、素人だからこそ産まれる「発想の転換」に期待をしていただいたのかもしれません。


「当社は言われたことに従うというよりは提案型で、したいことができる自由な社風がモットーです。何事も結果を伴うのが最善ですが、やらないよりやって失敗した方がまだ良いという考えが根付いています」(オーエスジー 桝田氏)[クリックで拡大]出所:Koto Online

 また、私自身「一生懸命に取り組む限り乗り越えられない試練はない」というのが持論であり、新製品の開発や駐在期間中は「達成感を原動力に」をモットーとし市場開拓に奮闘してきました。そういったポジティブ思考を踏まえて新たなチャレンジの場をいただけたのかもしれません。

新工場のコンセプトは「Zero-One」

田口 NEO新城工場のコンセプトを、どのように具体化していきましたか。

桝田 私がシカゴから帰任した時点で、工場の広さやレイアウト、旧工場とつなぐといった構想はできていましたが、生産体制刷新のコンセプトはまだ未確定の状況でした。ほぼゼロに近い状態でした。ただし、私自身も工場の経営・運営や生産体制の刷新に関してまったくの素人ですから、まずは関係者に積極的に声をかけ協力を仰ぎ、生産企画・製造技術・生産管理の各部署から集まったSFJチームメンバーとも意見を出し合いながら物事を進めました。

 スマートファクトリーの具現化に向けて動き出したのは、工場が完成し機械を別の生産拠点近隣の大池工場から移設し終わった2020年6月からです。経営層からは「ただ機械を並べるだけではなく、逆転の発想で新しいことに是非挑戦をして欲しい」といわれていました。また、生産体制刷新の根幹となるデジタル化は【0】と【1】のコンビネーションで成り立っていることも加味し、【0】から【1】を産みだすゲームチェンジャーであり続けたいとの思いから「Zero-One」を工場全体のコンセプトとして決めました。

 これを受け、新しい発想が生まれることを期待し、NEO新城工場以外の呼び名として「Zero-One Factory」、フリーアドレスを採用するオフィスは「Zero-One Office」、社員が日々利用するカフェテリアは「Zero-One Cafeteria」というように、主要エリアの名称に「Zero-One」を冠しています。

田口 スマートファクトリーに対しては、どのように捉えていますか。

桝田 われわれが最終的に描いた構想は、ボタンを押せば全自動で製品が完成する「お金をかけた見た目のかっこいい自動化」ではありません。週末無人稼働に必要なロボットなどはもちろん導入するとともに、スキルを持った製造現場の方々の無駄を省き効率的な生産を可能にする「現場力を後押しするデジタル化」をDXとともに推進、深化することだと考えています。

田口 自動化だけではなく、デジタル技術の導入による人と生産の効率化がテーマになっているわけですね。

桝田 スマートファクトリーに関しては新聞などでよく取り上げられていますが、100社あるとそのコンセプトも100通りあります。アセンブリの会社や毎月同じ製品を指定された数作るモノづくりと、われわれのような毎月の受注の状況で生産するものが目まぐるしく変わる超多品種少量生産の会社とでは、段取りの数が根本的に大きく異なってきます。これから労働人口が減少するなか、アウトプットを最大化するにはどうすればよいか。その答えの1つがデジタル技術の活用でした。

 また、当社は工具メーカーとして、お客さまから選ばれる存在であり続けなくてはなりません。そのためにはお客さまに寄り添ったフレキシブルな対応や、約束した納期を確実に守ることが求められます。例えば、ある日の朝からお客さまがテストを予定されている場合、前日までに確実に製品をお届けしないといけません。簡単にできることのように考えがちですが、さまざまな阻害要因から常に100点を取り続けるのは難しいことも事実です。

 製造業にとってQCD(品質、コスト、納期)は永遠の課題であり、NEO新城工場では、お約束した納期で確実にお届けするモノづくりを提唱しています。

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