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NEO新城工場の立ち上げと同時にスマートファクトリーを実現、OSG流の大胆なDX推進工場見学レポート〜ものづくり最前線〜(3/4 ページ)

Koto Online編集長の田口紀成氏が、工場見学を通じて製造業DXの最前線に迫る本シリーズ。オーエスジーのNEO新城工場に伺い、同所の開設・運営に携わる第2製造部 部長の桝田典宏氏にご案内いただきました。

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Koto Online

生産管理と製造状況を見える化

田口 製造工程の見える化を通じて、NEO新城工場は納期を厳守した多品種少量生産を実現したと理解できました。

桝田 以前はExcelで管理していましたが、6000種類、8000ロットを作るのにExcelの対応でよいのかというのは、大きな疑問でした。そこで、ペーパーレス化や脱Excel管理に舵を切る必要性が出てきて、デジタル技術を活用した生産体制の刷新につながりました。

 現場力を後押しするデジタル化ツールは大きく分けて2つあり、1つは生産管理のツールです。ボトルネック工程からのアウトプットを最大化する為に、生産スケジューラーなどを活用しています。類似アイテム同士をできる限り集約して連続で組み入れることで段取替えを極限まで削減したり、加工機の混雑具合により稼働率に余裕のある他機種へ負荷分散するなど、最適化した組入れを実現することで最終的な生産アウトプットも最大化できました。

 また、製造現場では納期を確実に守るモノづくりと同時に納期リクエストにフレキシブルに対応すべく、加工優先順の管理方法を刷新いたしました。常に今最優先で作るべきものに注力するモノづくりを実践するためにRFIDを活用しており、製品の進捗データは全てERPと連動し最新の加工優先順位をステイタスモニターで確認できます。さらに、家電量販店やスーパーマーケットで価格を表示する電子ペーパーを活用し、工程完了納期も同時に表示することで、今何を作るべきかが分かるように徹底しています。

 一昔前は工程ごとに設置したホワイトボードに「進行表」と呼ばれる紙を貼り、加工機別の仕掛状況や加工優先順位管理、納期確認などを行っていましたが、お客さまから納期変更依頼がある度に生産管理担当者が現品の所在工程を調べ、その現場に出向いて、赤ペン先生のごとく納期を修正することに疑問を感じていました。だからこそ、ステータスモニターや電子ペーパーに置き換えて今までの無駄な時間を大幅削減したのです。

田口 こういった現状は、どのように確認できるのでしょうか。

桝田 各工程に設置されたモニターです。ステイタスモニターに工程完了納期に対する各オーダーの残り時間が色分けで区分されて表示されるので、どれから取り掛かればよいか、遅れが多いかなど、現状を瞬時に判断することができます。システムを使うことで現場の方々が迷うことなく、リアルタイムの優先順位で加工に取り組める「シンプルスマート」な環境を整備しました。

 そしてもう1つの現場力を後押しするデジタル化ツールは、製造の状況を管理するPowerBIです。製造の状況がさまざまな切り口で見える化されるPowerBIが存在しますが、そのなかでも稼働率の見える化はとても重要で、「前日と当日の比較」だけでなく、「週次・月次での比較」や「加工機別の比較」なども可能となっています。

 稼働率と言ってもそれぞれの会社によって定義は異なり土日を含めない場合もありますが、弊社の稼働率の定義は365日24時間をベースとしています。繁忙期には製造現場の方々に土曜日も臨時出勤していただきますが、基本的に日曜日は出勤しません。しかし自動測定・自動補正機能を有した機械を取りそろえることで、日曜日でも平日と同様の稼働率が得られていますし、週末にロット内の数量が多いアイテムを流すような工夫もしており、これも高稼働率につながる要因と言えます。

田口 自動で作れるものを週末に寄せているということですか。

桝田 そうです。平日は段取工の人数も多いので本数の少ない小口オーダーの対応に注力し、週末稼働時に300本ロットを3種類連続で作るといった具合です。ですから、日曜日でも90%以上の稼働率ということもあります。また、同じ機種でも号機によっても稼働率に差が生まれますので、実際に稼働が低かった加工機については、製造現場のラインストップミーティングにて原因の分析を行い稼働率の改善につなげています。


「単純にBIの画面を眺めて終わりではなく、どう結果につなげていくかが大事だと考えています。なお、稼働率の可視化、工程納期順守などのさまざまなBIツールは、他工場にも横展開しました」(オーエスジー 桝田氏)

田口 BIを主とした見える化のシステムは、どなたが作ったのですか。

桝田 NEO新城工場のデジタル推進チーム(現DX推進課)が担当しました。OSG社内のIT部門は基幹システムや営業系のシステム対応などでとても忙しいので、製造の状況を管理する見える化システムに時間を割いてもらうのは申し訳なかったので、製造技術、生産管理のメンバーや、製造現場でExcelを上手に使いこなすメンバーを集め、工場直下にデジタル推進チームを設けたのです。これまで紹介したBIベースの見える化システムは全て彼らが作ったもので、何一つ外注していません。日々の製造の中で起きる問題にスピード感を持って対処するために、データを見たい切り口で自由に料理しすぐに自社内で可視化できるのは、われわれの強みです。

 納期に関するBIもあります。モノづくりでは初工程からの遅れが蓄積して最終工程に近づくにつれて遅れの数が増え非常に遅れているように見えます。ところが、最終工程の職制からすると、抱えている遅れが前工程からの累積の遅れなのか、それとも自分たちの工程で遅れを発生させたのか、また遅れを軽減、解消できたのかなど、責任の所在が分かりません。そこで明確化したいという声が挙がり、要望に応じて作りました。ここでは赤系統の色で遅れの発生や増加を、青系統の色で遅れの解消や低減を確かめられます。

 例えば、ある工程で赤色の遅れが多発しても、適切な対策を講じることで遅れが減少したことが分かるなど、班のパフォーマンスを表す成績表としても機能しています。今は、毎週の週次ミーティングで現場の係長が自分の係の製造進捗状況や問題点を分析し対策をいつまでに実施するかなど、BIのデータとパワーポイントを駆使しプレゼンするのが、われわれの工場のスタイルとなっており、同時に職制の方の分析力・プレゼン力・伝える力を磨くことにもつながっています。

田口 状況の可視化や確認に関して、BIは非常に優秀ですよね。

桝田 ある工程に到着した時点で70%遅れがあり、その工程の完了時点では23%まで減っていたら、その班が遅れのリカバリーに奮闘した頑張りが浮き彫りになります。かつ、70%遅れで入ってくるということは、その前工程のどこかが足を引っ張っているわけです。そこまでを見える化できるのがBIの良さであり、これがないと工場は回せません。

 ちなみにこういったBIの情報はリアルタイムでどこからでもチェックできるのが利便性の1つで、例えば私が海外出張に出掛けていても携帯電話さえあれば製造の状況をどこからでも把握することが可能です。逆に工場の方々からすると常に状況を見られているという意識が働きますが、暗黙の信頼関係の醸成にも役立っています。

田口 これだけDXを進めたとなると、設備投資にかなり費用がかかったと思います。

桝田 もっとも費用を投じたのは生産スケジューラーですかね。毎年の保守料金なども加味するとかなりの額になるかと思いますが、PowerBIにはほぼお金はかかっていませんし電子ペーパーも皆さんが想像されるよりは決して高価ではありません。

CORE CONCEPT TECHNOLOGIES INC.

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