新たな成長軌道を描く日立のCIセクター、DSSやGEMとの“クロスセクター”を重視:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
日立製作所がコネクティブインダストリーズ(CI)セクターにおける「2024中期経営計画(2024中計)」の進捗状況と次期中計に向けた新たな成長戦略などについて説明。2024年度以降は、半導体/バッテリー製造、バイオ関連などの高成長分野に投資を集中して新たな成長軌道を描いていく方針だ。
CIセクターが新たな成長軌道を描くには“クロスセクター”が必要
阿部氏の戦略では、製造分野、ヘルスケア分野、サービス分野の成長市場に対して、強化した産業系プロダクト事業とインテグレーション事業を組み合わせたソリューションを展開するというアプローチになる。その代表例として、半導体製造、バッテリー製造、バイオ医薬製造、分子診断/個別化医療/低侵襲治療、サービス化の拡大、スマート/グリーンビルディングなどを挙げた。
半導体製造では、業界トップクラスのシェアを持つ測長SEMをはじめとする検査装置のデータを活用した生産性向上ソリューションを提供する。プロダクトとなる半導体製造装置の強みに、米国、韓国、台湾で大手顧客の近傍に置く協創拠点から得られる顧客データと、DSSセクター傘下のGlobalLogicの協力を得て開発したデータ統合プラットフォームによるデジタル化も掛け合わせる。その結果として、装置状態可視化や予兆診断にかかる時間を80%、データ統合ビュワーや断面自動計測にかかる時間を50%短縮することで、競合他社への差異化につなげる。
バッテリー製造では、他社に先行する異物検査装置をはじめとする検査/分析装置をベースにロボティクスSIとデジタルを掛け合わせて量産を効率化していく。ここで言うロボティクスSIをけん引するのが、2019年に買収した米国のJR Automationで、既に米国のMoxion Powerとの協創でバッテリーモジュールの量産ラインを構築するなどの実績がある。そして、デジタルに対応するバッテリーライフサイクルマネジメントについては、半導体製造と同様にGlobalLogicの協力を得る。
バイオテクノロジー関連では、バイオ医薬製造と分子診断/個別化医療/低侵襲治療に注力する。バイオ医薬製造では、日本トップクラスの実績を持つ培養槽などを核として、それにバイオ医薬品関連の法規制対応に関する知見やノウハウ、国内の医薬品分野で広く採用されているMES(製造実行システム)とLIMS(ラボ情報管理システム)をデジタル技術として掛け合わせる。分子診断/個別化医療/低侵襲治療は、日立ハイテクが手掛ける生化学/免疫分析装置やDNAシーケンサーなどの診断/治療装置と、粒子線治療システム、がん遺伝子検査パートナーとの協創によるAI(人工知能)診断などの組み合わせでがん治療の高度化に貢献する。
さまざまな産業機器の運用効率化に向けたサービス化の拡大では、空気圧縮機、マーキング、パワエレ/ドライブ、昇降機、業務用空調設備などCIセクターが豊富なインストールベースを有するプロダクトを対象に、これまで培ってきたドメインナレッジを生かしつつ、故障予兆保全や省エネ診断、部品交換レコメンドなどを可能にしていく。ここでも、GlobalLogicの協力を得て、プラットフォーム改善や組み込みソフトによるIoT(モノのインターネット)化などを図っていく考えだ。
スマート/グリーンビルディングの事例では、野村不動産グループが展開する「BLUE FRONT SHIBAURA」S棟に導入したビルIoTソリューション「BuilMirai」による、効率的なビル運用や省エネの成果を紹介した。
阿部氏は「CIセクターの強みはプロダクトにある。このプロダクトの競争力強化に向けた重点的な投資によって、プロダクトを中心としたサービスも伸びる。ただし、伸びる市場にフォーカスして、その市場成長を刈り取っていくためにはインテグレーション事業の強化も重要であり、差異化ポイントになる」と強調する。このインテグレーション事業の強化で重要な役割を果たすのが、DSSセクター傘下のGlobalLogicとの連携や、米国JR Automationというわけだ。
また、阿部氏は、CIセクターが新たな成長軌道を描く上で、DSSセクターやGEMセクターとの“クロスセクター”を作り出していくことの重要性も訴えた。「CIセクターはグローバルで事業を展開する顧客との接点を豊富に持ち、日立の中で現場の課題を最も把握している。その課題解決に向けて、生成AIやメタバースなどのデジタル技術を活用する際にはDSSセクターやGloablLogicを活用し、カーボンニュートラルや省エネといったグリーン化が関わる場合にはGEMセクターと連携する。両セクターと連携して面で攻めていくときには、CIセクターがリードしてその市場の成長を刈り取っていかなければならない」(同氏)としている。
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