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構造で減音するマスク型デバイス 若年層の声から生まれた「Privacy Talk」小寺信良が見た革新製品の舞台裏(31)(3/4 ページ)

マスク型の装着型減音デバイス「Privacy Talk」をご存知だろうか。キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)内の企業内起業で発足した「ichikara Lab」がゼロから企画した製品だが、なぜこうしたデバイスが出来上がったのか。開発の経緯や狙いについて、担当者に話を聞いた。

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減音と集音、そしてサイズ感との戦い

――デザイン的なところでは、装着した時に普通のマスクに見えるところが非常に大きなポイントではないかと思います。マスク型というコンセプトは、最初からあったんですか。

前田氏 確かに最終的に製品の形状はマスク型に落ち着いたのですが、もともとは「声を減音するにはどうすればよいか」「声はどこから出ているのか」を考えて、ゼロから形を模索し始めました。

 まず、人間の声自体は体全体から発せられているというのが前提としてあります。その中でも、音量の大部分はやっぱり口から出るものですから、そこを抑えに行くのがセオリーじゃないかと。口元を抑えるイメージがある製品の形は何だろうということになり、マスク型にたどり着きました。

 じゃあ、どうやって声を抑えるのかという具体的な構造についても、試行錯誤して検討を重ねました。音を抑えるには密閉させなきゃいけない。でも喋れるようにするには空気の通り道を確保しなきゃいけない。相反するこの2つをどう両立させるのか。市販のホームセンターで部材とか買って試してみながら、スタートしていきました。

――口に当たるところは柔らかいシリコンの形ですよね。人が笑った唇みたいな形になってますけど、こういう形に行き着くまでにはまあまあ時間がかかったような気がするんです。

笑った口のようなシリコン型
笑った口のようなシリコン型[クリックして拡大]

前田氏 そうですね。自分で作った時は、ヘッドフォンのイヤーマフを口元に当てたりとか、そんなことから始めていきました。喋る時の口の開きとか、どれぐらいの余裕があれば問題ないのかは、プロトタイプを作ってこれはちょっと喋りづらいとか、笑った時に隙間が空いちゃうとか、いろいろ検証しました。

 それから「CPAP」という睡眠時無呼吸症候群の治療に使うマスクがあるんですが、その形とかも参考にしました。いろんなものをちょっとずつ取り入れて、この構造に行き着いた感じですね。

――CPAPは鼻まで覆うタイプもありますけど、今回はそこまでカバーしないという決断をした。

前田氏 鼻まで覆うと、喋った時に息苦しいというのは検証段階からある程度分かっていたので、まずは口元だけ覆うようにすべきだと考えました。かつ、鼻まで含めると、男性/女性で形がそれぞれ変わってくるということもあるので、口だけにフォーカスして、ここに当てるような形になっていますね。

――ユニット全体の大きさも重要ですよね。マスク内に収めるには小さい方がいいんでしょうけど、でも口も開かなきゃいけないっていうサイズ感のバランスが。

前田氏 そうですね。今のサイズ感になるまでは、もうmm単位というか、結構試行錯誤したっていうのはあります。

 これを実現するためのキーになったのが、音響メタマテリアル技術です。これがあったことで、このコンパクトさが出せました。

音響メタマテリアルの構造
音響メタマテリアルの構造[クリックして拡大]

――その音響メタマテリアル技術っていうのを、もう少し詳しく教えていただけますか。

前田氏 Privacy Talkの通気口の中には、音響メタマテリアル技術を採用した迷路のような構造が入っています。この迷路構造の中を音声が通過し構造の壁面に当たることで、音声を打ち消しあう状況が構造内で生じています。

 今回はAMG(Acoustic Metamaterials Group)さんの音響メタマテリアル技術を使って、このPrivacy Talk内部の仕組みに落とし込んでいます。電子的な制御ではなくて、構造で抑えにいっているという理解が正しいです。

――喋る声を減音するという意味ではその構造が効くわけですけど、内部には通気のためにファンが回ってますよね。これも結構な音がしてますが、このファンの音をどのようにリダクションしていくかっていうところも難しいところだと思うんですが。

前田氏 Privacy Talkの中にはマイクを2つ搭載しています。ファンの回転音だけを一方のマイクで拾って、反対側のマイクで拾った音声からファンノイズを差分として抜く、という処理を内部で行っています。

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