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構造で減音するマスク型デバイス 若年層の声から生まれた「Privacy Talk」小寺信良が見た革新製品の舞台裏(31)(2/4 ページ)

マスク型の装着型減音デバイス「Privacy Talk」をご存知だろうか。キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)内の企業内起業で発足した「ichikara Lab」がゼロから企画した製品だが、なぜこうしたデバイスが出来上がったのか。開発の経緯や狙いについて、担当者に話を聞いた。

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「コロナ禍」を機に顕在化したニーズ

――この商品を語る上では、やはりコロナ禍という事象が欠かせない視点なのかなと思います。まず商品企画の経緯からお伺いします。

前田諒氏(前田氏) 私たちichikara Labでは、Z世代を含めた若年層の方々と継続的にワークショップやアイデア創出の取り組みを行っています。その中でちょうど3、4年前にコロナ禍に入って、「おうち時間」が増え、 仕事もテレワークせざるをえない状況の中で、「オンライン飲み」がワードとしてはやりました。

――ああ、実際集まって飲めないから、それぞれの自宅からオンラインでつながって飲み会をやるというヤツですね。

前田氏 それです。その時に一部の方から聞いたのが、同居している家族に話の内容を聞かれるのが嫌だという声です。そこを深掘りしていくと、そもそもオンラインの飲み会だけでなく、例えば恋人に電話する場合でも、家族に内容を聞かれたくないから外で電話する、という方もいると分かりました。

 家だけではなくて仕事場でも、隣の席の同僚に話を聞かれたくないから電話がくると廊下で話をするとか。自分の声が周囲に聞かれていることが、ちょっと嫌だなと思うシーンが、結構あると分かりました。

 こうした悩みは、コロナ禍が原因で生まれた話ではなかったのかもしれません。ただ、もともとあった悩みが浮き彫りになったのがコロナ禍だった、というのはあるのかなと思いますね。

――なるほど。コロナ禍になって、リモートワークとかを積極的に取り入れるようになることで、今いる場所とは関係ない人とつながる機会が増えた。この傾向は、ある意味働き方も変えていったという側面もあるわけですが。

前田氏 コロナ禍の初期段階では、多くの方が在宅勤務を余儀なくされました。ただ、時間がたつにつれて徐々に出社も増えていき、次第に働き方は在宅とオンラインのハイブリッドになっていきました。そうなると出社してもオンライン会議がずっとあるわけで、当社もそうでしたが、会議室が足りない状態に陥りがちです。

 課題としてあったのが、1人でも大きな会議室を予約してしまうケースがあることです。すると部屋の予約がびっしり埋まってしまい、会議室が取れない方はオープンスペースのフロアの中でオンライン会議をすることになる。結果的にボックス型の会議ブースがオフィスに配備され始めるといった変化が起こりました。今もそういった状態は続いているでしょう。

――そんな中でPrivacy Talkの構想が生まれてきたわけですね。ぶっちゃけ、キヤノンMJの中でも使われているわけですか?

前田氏 私たちはそもそもPrivacy Talkを持っているので、適宜必要に応じて使っています。他の社員でもモニターとして使ってくれている方々がいますね。

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