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注目集まるリン酸鉄リチウム、メリットとデメリットを整理しよう今こそ知りたい電池のあれこれ(24)(3/3 ページ)

中国系企業を筆頭にLFP系材料であるリン酸鉄リチウムの採用事例が目立つようになってきています。リン酸鉄リチウムの採用については、高い安全性や低コストといったメリットが挙げられる一方、エネルギー密度の低さやリサイクル時の収益性に対する懸念などデメリットに関する面の話題を耳にすることもあるかもしれません。

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新たな資源問題を誘発する懸念も

 最後に、資源面の問題についても考えてみたいと思います。昨今は「脱炭素」に対する議論が注目され、リチウムイオン電池を始めとする電池技術にはCO2排出の削減に寄与する環境影響が期待される傾向にありますが、本来はCO2排出量のみではなく、資源消費量など、その他の要素も統合的に解釈したときの環境影響についても考えていくことが大切かと思います。

 リン酸鉄リチウムに用いられる「リン」ですが、食糧生産などにも欠かせない資源であり、一説には現在の消費ペースでは約50〜100年程度で枯渇するとも言われています。

 希少資源であるコバルトの使用量を減らすために進んでいる「コバルトフリー」ではありますが、電池等に適した高純度で品質の良いリン資源は産出地域が限られているため、新たな資源問題を誘発するのではないかという懸念の声もあり、今後も注視が必要な領域となっています。

※関連リンク:新しいグリーン産業としてのリン資源リサイクル:大阪大学大学院工学研究科

まとめ

 今回はリン酸鉄リチウムの特徴について、昨今よく耳にする各種メリットやデメリットといった点も踏まえて整理し、解説してみました。

 一般的にメリットとされる高い安全性や低コストといった特徴であっても、その裏には火災事例や原料費以外のコストなどの留意すべき事項があります。また、エネルギー密度やリサイクルの収益性といったデメリットとされがちな特徴においても、そのデメリットを克服するための技術開発が進んでいることが分かります。

 リン酸鉄リチウムを含め、リチウムイオン電池をはじめとする電池技術の可能性はまだまだ広がっています。日本カーリット受託試験部では、今後も受託試験を通して電池開発に貢献できるよう、電池評価に取り組んでまいります。

著者プロフィール

川邉裕(かわべ ゆう)

日本カーリット株式会社 生産本部 受託試験部 電池試験所
研究開発職を経て、2018年より現職。日本カーリットにて、電池の充放電受託試験に従事。受託評価を通して電池産業に貢献できるよう、日々業務に取り組んでいる。
「超逆境クイズバトル!!99人の壁」(フジテレビ系)にジャンル「電池」「小学理科」で出演。

▼日本カーリット
http://www.carlit.co.jp/

▼電池試験所の特徴
http://www.carlit.co.jp/assessment/battery/

▼安全性評価試験(電池)
http://www.carlit.co.jp/assessment/battery/safety.html

→連載「今こそ知りたい電池のあれこれ」バックナンバー

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