中国の苦戦、認証不正、北米の好調……2023年度の新車生産を振り返る:自動車メーカー生産動向(3/4 ページ)
長らく続いた半導体の供給不足の緩和や北米を中心とした旺盛な需要などにより自動車生産の回復が続いている。日系乗用車メーカー8社の2023年度の世界生産合計は、2年連続で前年度実績を上回った。
スズキ
スズキの2023年度のグローバル生産台数は、前年度比1.7%増の326万5203台と、3年連続で増加した。同社生産の6割を占めるインドは、市場での旺盛な需要に対して、半導体の供給改善やSUVの新型車を積極投入したことなどにより、同3.2%増と3年連続で増加。年度として過去最高を更新した。
ただ、インド以外の海外生産が前年度比19.3%減と低迷。これはパキスタンで2022年12月に導入された新たな輸入外為規制で部品の確保が困難となり稼働停止したことが大きく響いた。その結果、海外生産トータルでは同0.1%減の225万3946台と3年ぶりに減少した。国内生産は、同6.0%増の101万1257台と2年連続のプラス。半導体の供給改善が進んだことが奏功した。
3月単月のグローバル生産台数は、前年同月比1.9%増の28万2242台と3カ月連続のプラス。前年3月が低迷したこともあり、8社の中で唯一の前年超えとなった。国内生産は半導体不足の改善や「スペーシア」や「スイフト」など新型車の投入効果もあり、同2.5%増の9万6337台と2カ月連続のプラス。
ただ、輸出は欧州向けが大きく落ち込み、前年同月比34.4%減と2カ月ぶりに減少した。海外生産は、インドが同8.0%増と好調で3カ月連続のプラスだった一方で、インド以外の海外は同32.9%減と大幅減で13カ月連続のマイナス。海外生産トータルでは同1.6%増の18万5905台と3カ月連続で前年実績を上回った。国内・海外ともに8社の中で唯一のプラスだった。
ダイハツ工業
8社中、最も厳しい結果となったのがダイハツだ。2023年度のグローバル生産は、前年度比16.8%減の144万436台と3年ぶりに前年実績を下回った。8社の世界生産で2桁パーセント減となったのはダイハツのみ。最大の要因は国内生産で、半導体不足や仕入れ先での火災、そして相次ぎ発覚した認証試験の不正による稼働停止が響いた。
ダイハツの国内生産では、ブレーキ部品に搭載する半導体の不足により、2023年5月から6月にかけて大分工場と京都工場で相次ぎ稼働停止を実施。加えて同年6月18日には、リヤアクスルなどのユニット部品を調達する浅野歯車工作所で工場火災が発生し、本社工場や滋賀工場、ダイハツ九州工場で稼働停止を余儀なくされた。
最大の要因となった認証試験の不正では、まず2023年4月28日に海外向け車両での側突試験認証申請で不正があったと公表。その後、同年5月19日には国内向け「ロッキー/ライズ(トヨタ向けOEM)」のHEVでもポール側面衝突試験の認証手続きに関する不正があったと発表し、生産を停止した。これを受けて第三者委員会を設置し、社内調査や再発防止策の策定を進めていた。その結果、同年12月20日に国内外64車種と3エンジン(生産終了モデル含む)を対象に25の試験項目で174個の不正が新たに判明したと発表。これを受けて同年12月25日以降、OEM(相手先ブランドによる生産)供給モデルを含む全車種の生産と出荷を停止した。
国交省はダイハツ全モデルについて安全性能の適合性を確認しており、2024年2月下旬時点までに衝突試験時にエアバッグのタイマー着火などの不正を行った「グランマックス」のトラックなどの型式指定を取り消す処分を下した。一方、安全性に問題がないトヨタ「プロボックス」や「ミライース」「ハイゼット/アトレー」の他、「ロッキー/ライズ(トヨタ)」のガソリン車などは出荷停止指示を解除。
プロボックスは2024年2月12日から、ミライースとハイゼットなどは同月26日から生産を再開。同年3月18日にはロッキー/ライズのガソリン車の生産も再開した。その結果、同年3月の国内生産は前年同月比65.8%減の3万453台と、同年2月の同91.7%減よりは増えたものの、大幅な前年割れとなり、6カ月連続のマイナスだった。
なお、国内最量販車種の「タント」は2024年4月10日から、「トール/ルーミー(トヨタ)」も同月19日から生産を再開するなど、順次主力車種の生産を始めている。また、「タフト」や「コペン」も同年5月6日以降に、「ムーヴキャンバス」も同月27日から生産を再開した。これで生産を停止している車種はロッキー/ライズのHEVのみとなった。
海外生産も伸び悩んだ。2023年度の海外生産は、前年度比4.8%減の81万7644台と3年ぶりに減少した。インドネシアが前年に実施した政府の減免措置の反動により同14.8%減と低迷したことが要因。マレーシアは新型「アジア」の投入などによりプラスを確保した。ただ、足元では減速が続いており、3月の海外生産は前年同月比22.3%減の6万2981台と5カ月連続のマイナス。インドネシアが同27.2%減と低迷する他、マレーシアも前年割れとなった。その結果、不正問題で大幅減の国内生産と合わせた3月の世界生産合計は、同45.1%減の9万3434台と7カ月連続で減少した。
マツダ
マツダの2023年度のグローバル生産台数は、前年度比7.4%増の121万9139台と2年連続で増加した。半導体の供給改善が進んだことや米国工場の2直化、「ラージ商品群」などの新型車への切り替えに伴う生産調整などが要因。とはいえ、タイの経済低迷や中国での販売規模縮小などもあり、コロナ禍前の2019年度との比較では15.0%減にとどまった。
このうち世界生産の3分の2程度を占める国内生産は、前年度比4.5%増の79万9066台と2年連続のプラス。半導体の供給改善に加えて、前年度の中国からの部品供給不足やゼロコロナ政策の反動などがプラスに働いた。ただ、足元では国内向け「CX-8」や北米向け「CX-9」の生産終了などが減産要因となった。車種別では主力モデルの「CX-5」が同4.9%増と増えた他、「マツダ3」が同19.7%増、「CX-30」が同29.1%増と大きく伸長した。
海外生産は、前年度比13.4%増の42万73台と2年連続のプラス。北米は、メキシコがマツダ3やCX-30の増産などにより、同16.6%増と伸長。さらに米国工場も2直化したことで同73.6%増と高い伸びを見せた結果、北米トータルでは同27.9%増となった。
中国は、一汽乗用車での「マツダ6」と「CX-4」の生産委託を2023年4月に終了。唯一の生産拠点である長安マツダ汽車でも「CX-8」の生産を終了した。ただ、同年6月から新たに「CX-50」の生産を開始して純増となった他、マツダ3やCX-30も増加したことで、中国生産は前年度比27.0%増と、中国生産の日系メーカーの中で唯一のプラスとなった。一方、タイは現地の経済低迷による需要減に合わせて「マツダ2」やCX-30の生産調整を実施したこともあり、同32.8%減と大幅マイナスだった。
3月単月のグローバル生産台数は、前年同月比18.9%減の10万429台と3カ月連続で減少した。特に国内生産は、北米向けの2列シートSUVの新型車「CX-70」の生産を開始したが、CX-8やCX-9の生産終了に加えて、CX-5が同12.2%減、マツダ3が同23.1%減、CX-30が同26.6%減と主力モデルがそろって低迷。さらにラージ商品群の「CX-60」も伸び悩んだ。その結果、同25.1%減の6万4026台と3カ月連続で前年実績を下回った。
海外生産は、前年同月比5.1%減の3万6403台と9カ月ぶりにマイナスへ転じた。北米が同8.8%減と。メキシコが「セマナ・サンタ」の祝日により稼働日が前年3月より5日減ったことで同27.7%減となったことが要因だ。米国は2直化により同90.9%増と伸長。中国もマツダ3やCX-5の増産に加えてCX-50の純増により同99.8%増と倍増した。ただ、タイは市場低迷が続いており、CX-30やCX-3の在庫調整により同48.4%減と生産も大幅に減らしている。
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