中国の苦戦、認証不正、北米の好調……2023年度の新車生産を振り返る:自動車メーカー生産動向(2/4 ページ)
長らく続いた半導体の供給不足の緩和や北米を中心とした旺盛な需要などにより自動車生産の回復が続いている。日系乗用車メーカー8社の2023年度の世界生産合計は、2年連続で前年度実績を上回った。
トヨタ自動車
メーカー別に見ると、トヨタの2023年度のグローバル生産台数は前年度比9.2%増の997万1739台と3年連続で増加した。大台の1000万台にはわずかに届かなかったものの、2022年度の913万台を上回り、年度の世界生産として過去最高を更新した。
けん引役は国内生産で、前年度比18.7%増の330万8556台と2年連続でプラスとなった。豊田自動織機の不正問題による稼働停止などが発生したが、半導体など部品供給が改善したことに加えて、国内市場の納期短縮を目的に、国内向けの部品供給を増やしたことも大幅増につながった。北米などのHEV人気により輸出も同23.7%増と国内生産を後押しした。
海外生産も伸長し、前年度比5.0%増の666万3183台と3年連続のプラス。年度の過去最高を更新した。前年に比べて半導体不足が緩和し、主力の北米は同12.6%増と3年連続で増加した。一方、中国は、前年の上海のロックダウンの反動はあったものの、新型コロナウイルス感染拡大による稼働停止や、市場のEVシフトによる販売競争の激化を受けて、同4.9%減と2年ぶりに前年割れとなった。
中国以外のアジアは、タイが経済低迷で同13.7%減と低迷したものの、インドが堅調な需要や3直化による台数増加などにより倍増。インドネシアも同3.8%増、台湾が同12.9%増と伸びを見せた。その結果、中国を含むアジアトータルでは前年並みと中国の落ち込みをカバーした。欧州は、半導体の供給改善や需要が堅調に推移したことにより同9.6%増とプラスだった。
3月単月のグローバル生産は、前年同月比10.3%減の80万7026台と2カ月連続のマイナス。このうち国内生産は、同10.0%減の28万3681台と2カ月連続の前年割れ。豊田自動織機の不正により、「ハイエース」「ランドクルーザー」「ハイラックス」などの出荷・生産を停止した他、同じラインで生産する人気車種の「アルファード/ヴェルファイア」などの生産停止が響いた。
好調が続いていた海外生産も伸び悩み、前年同月比10.4%減の52万3345台と6カ月ぶりに前年実績を下回った。主要市場の北米は、堅調な需要に支えられ同5.6%増と12カ月連続で増加した。欧州もトルコの新型車生産などにより同9.8%増と2カ月連続のプラス。ただ、それ以外の市場は低迷している。中国は競争激化による販売減少を受けて同24.7%減と大幅減となり、2カ月連続のマイナス。
中国以外のアジアは、主力のタイが経済低迷により販売が減少しており前年同月比32.6%減、インドネシアも同22.4%減と主要国がそろって低迷。インドは同26.5%増と好調だったが、中国を含むアジアトータルは同19.8%減と2カ月連続で減少した。
ホンダ
ホンダの2023年度のグローバル生産は、前年度比7.8%増の411万7851台と5年ぶりに前年実績を上回った。受注が好調かつ半導体の供給緩和で大幅に回復した北米が同28.5%増とけん引。7年ぶりにプラスへ転じた。ただ、中国は、市場のEVシフトによる競争激化などにより、同10.5%減と3年連続のマイナス。中国の減産によりアジアトータルでも同7.2%減と3年連続で減少。それでも北米の好調により海外生産トータルでは、同7.3%増の341万1005台と6年ぶりにプラスへ転じた。
国内生産も好調で、前年度比9.9%増の70万6846台と2年連続のプラス。前年に比べて半導体不足の影響が緩和しプラスを確保した。国内市場では、国内最量販車種の「N-BOX」はフルモデルチェンジの効果もあり、2023年度の国内販売で同6.7%増と好調を維持。車名別ランキングでも唯一の20万台超えで首位を守った。
一方、足元の生産状況はマイナスが続いている。3月単月の世界生産は、前年同月比19.1%減の34万1073台と大きく落ち込み、2カ月連続のマイナス。このうち国内生産は、同15.7%減の6万1370台と2カ月連続で減少した。元日の能登半島地震により部品供給に支障が出て稼働調整を実施した影響が表れている。
海外生産も前年同月比19.9%減の27万9703台と2カ月連続のマイナスだった。北米は新型車の販売好調により同3.1%増とプラスを確保し15カ月連続で増加した。一方、中国は厳しい販売競争により同43.7%減と急減し、2カ月連続で減少。中国で生産する4社で最も減少幅が大きかった。その結果、アジアトータルも同34.7%減と厳しく、2カ月連続で前年実績を下回った。
日産自動車
日産自動車の2023年度のグローバル生産台数は、前年度比3.9%増の339万2601台と6年ぶりに前年実績を上回った。好調だったのが国内生産で、同21.5%増の72万4838台と2年連続のプラス。8社の国内生産で最も高い伸び率だった。半導体の供給改善に加えて、国内向けおよび輸出向け「エクストレイル/ローグ」、国内向け「セレナ」など新型車が貢献。その結果、輸出も同36.1%増と伸長した。
海外生産は、前年度から878台少ない266万7763台と6年連続の前年割れだった。好調だったのは北米で、新車販売の好調と半導体の供給改善により、米国が前年度比8.9%増、メキシコに至っては同44.2%増と急増。英国も「キャシュカイ」の好調で同24.9%増と大幅プラスを確保した。
一方、主力市場の中国は厳しく、足を引っ張っている。市場のEVシフトやそれに伴う競争激化などにより、前年度比16.9%減と3年連続のマイナス。中国で生産する日系メーカーの中で最大の減少率となるなど、日産の中国事業の厳しさが浮き彫りとなった。なお、この台数は小型商用車(LCV)を手掛ける東風汽車(DFAC)の株式売却に合わせ、LCVを除いて前年比を比較した日産独自の集計となる。日産の中国事業として前年実績にLCVを含んで比較すると同21.0%減となる。
3月単月のグローバル生産は、前年同月比20.2%減の28万3343台と2カ月連続で前年実績を下回った。大幅減の要因は中国で、同39.7%減と2カ月連続で減少した。さらに北米も米国が同5.5%減、メキシコが同12.2%減とそろって減少に転じた。英国も同15.1%減と全ての地域が前年割れした。その結果、海外生産トータルでは、同22.6%減の22万4556台と2カ月連続のマイナスで、8社の国内生産で最大の落ち込みとなった。
長らく回復基調が続いていた国内生産も低迷し、前年同月比9.5%減の5万8787台と23カ月ぶりにマイナスへ転じた。北米同様に物流など供給面の課題が浮上している。これに伴い、輸出も同14.4%減と減少している。
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