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スマートファクトリーとAI、ChatGPT-4oの衝撃と可能性工場スマート化の今(3/3 ページ)

世界の産業界でIoT(モノのインターネット)やロボット、AI(人工知能)などを活用したスマートファクトリー化が進んでいる。その流れの中で何が起きているのか、Beckhoff Automation(日本法人) 代表取締役社長の川野俊充氏に話を聞いた。

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AIにどう向き合っていくべきか

MONOist AIの進化に対して、FA業界はどんな点に注意しなければいけませんか。

川野氏 セキュリティセーフティーだ。

 ロボットとヒトの関係を捉える際に、ロボット(の誤動作など)からヒトを守るのがセーフティであり、ヒト(の悪意など)からロボットを守るのがセキュリティだ。

 双方揃って必要十分な安全性が担保されるとして、これまで安全規格などが定められてきたが、今後ロボットにAIが搭載されることが前提となると、安全規格の境界領域が大きく変わってくる。

 機械安全規格「IEC61508」やサイバーセキュリティ規格「IEC62443」が相次いで改定されおり、各社対応に追われているのが実情だ。ロボットの機能・性能を差別化することに加え、こうした新しい規格にタイムリーに対応できる体力が市場で勝ち残るための要件になってくると考えられる。

 AIが学習、推論をするためには電力を大量に使い、ものすごい数のGPUを動かしてデータを学習する必要がある。もう技術そのものはある程度はめどがついている。あとは誰がデータを押さえるかだ。誰もが現場のデータが求めている中で、現場を持つ個別の企業がどうやってそれを守っていくのかがますます重要になる。

 機械が知能的になると逆に人間に近づいて、何かの拍子に予測つかない行動を取る可能性もある。プログラミングをしてもバグは発生するが、AIに学習させても当然バグは起こり得る。それを抑えるための技術も大切になる。このセキュリティとセーフティーにどうやって向き合っていくかが課題だ。

 われわれ人間、現場や企業がどうやってAIと付き合っていくのかを真剣に考えないといけない。

 日本で新卒採用を考えており、どのように学生を選考して、研修し、現場で経験を積ませたらいいのか、成長していくために必要な土台をいかに作るべきかを今、一生懸命考えている。

 将来は全く同じことをAIやロボットに対しても考えなければならなくなる。どのベンダーのAIを設定し、どのように訓練すれば生産性が上がるのか、どんなデータをかけ合わせれば一番効率よく動いてくれるのかなど、相手が人間と同じであるかのように考える必要がある。

 今後、各社が訓練したAI同士の性能や機能で差別化を図っていく時代が来ると、その中ではAIを訓練できる人材に価値が生まれるだろう。

 将来のロボットは多数の腕があったり、高速で動き回れたりして、人間よりも機能性が高くなっているかもしれない。われわれの常識そのものもアップデートする必要がある。

 現在のモノづくりやスマートファクトリーの方向性をどのように軌道修正するか、AIに使われる側ではなくAIを使う側に回るために、今から何をしておく必要があるのか、経営者や現場の人も皆がそれぞれ考えなければならない。


ベッコフオートメーションの川野氏

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