1次要素と2次要素は「次元が違うくらい」異なる!?:CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる(5)(4/4 ページ)
金属疲労を起こした際にかかる対策コストは膨大なものになる。連載「CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる」では、CAEを正しく使いこなし、その解析結果から疲労破壊の有無を予測するアプローチを解説する。連載第5回は「1次要素」と「2次要素」について取り上げる。
四面体要素の形状関数
前回、形状関数を導入すれば、要素次数に関係なく同じ手続きで要素剛性マトリクスが計算できることを述べました。四面体要素も例外ではありません。今までは説明を簡単にするために、四面体要素の中の変位を式2、式3や式7、式8で補間していました。これはこれで正しく、これらから要素剛性マトリクスが導けますが(式2、式3の場合は参考文献[3])、形状関数を使っても導くことができます。
形状関数は、各節点の変位を使って要素内部の節点の変位を補間式で求めるための式でした。図21に示す四面体要素の場合、図のA点の変位を求めるためのものでした。
2次元四角形要素のときの変位の補間式は次式でした。
3次元四面体要素のときの変位の補間式を次式としましょう。
Li、Lj、Lk、LlはA点の位置の関数です。A点の位置がi節点に近づくいたときに、Liは1になり、かつ、Lj、Lk、Llはゼロになってくれれば都合がいいですね。図21にA、j、k、l点を頂点とする四面体を追加したものを示します。Liを図22の赤い四面体の体積とグレーの四面体の体積の比としましょう。次式です。
A点の位置がi節点に一致したときは、2つの四面体の体積が等しいので、Liは1になります。Lj、Lk、Llを次式で定義します。
例えば、i、A、k、l点で作る四面体は、Aとiが同一位置になったときに高さゼロの四面体になってしまい体積はゼロとなり、Ljはゼロになります。同様に、Lk、Llはゼロになってくれて、都合のいい関数が作れました。ここでLi、Lj、Lk、Llを「体積座標」といいます。そして、体積座標をそのまま形状関数にすれば、前回「アイソパラメトリック要素」のところで説明した手順で要素剛性マトリクスが作れるとのことです(参考文献[2])。四面体1次要素の形状関数は次式となります。
図23に四面体2次要素を示します。四面体2次要素の形状関数の一例を次式に記します。
今回は「1/4円弧で要素分割数2[-]でよい」と、かなり踏み込んだことを述べました。この辺は意見が分かれるかと思います。要素分割数2[-]といっても、CAEソフトによっては、図24のa寸法よりb寸法の方がはるかに大きい要素を生成するものがあります。a寸法とb寸法がほぼ同じになっていることを確認してくださいね。
次回は、応力特異点を説明し、連載第1回で片持ちはりの応力値がおかしくなった問題を解決します。お楽しみに! (次回へ続く)
参考文献:
- [3]三好|有限要素法入門|培風館(S53)
Profile
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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