“使えるデータ”が自動で生まれる 東洋エンジニアリングが導入した分析基盤:製造IT導入事例
Alteryxは東洋エンジニアリングにおける製品の活用事例を紹介する説明会を開催した。合わせて、カスタマーサクセスサービス「Premier Success」の運用を本格的に開始した。
Alteryxは2024年4月16日、東洋エンジニアリングにおける製品の活用事例を紹介する説明会を開催した。合わせて、カスタマーサクセスサービス「Premier Success」の運用を本格的に開始したと発表した。
設計期間を50%短縮する効果も
Alteryxはデータ分析のAI(人工知能)プラットフォームを提供する企業だ。世界で8000社が導入しており、銀行など金融業界やIT業界の他、製造業でも導入事例がある。
「Analytics for All」をスローガンに掲げており、どんなユーザーでもデータ分析のプロセスに参加できるような基盤構築を目指している。企業におけるデータ分析のサイクル全体を支援しており、外部のデータプラットフォームなどと連携して、AIなどによるデータ検索、加工、分析、予測モデリングの構築機能などを提供する。AIは自動データストーリーの作成や、自動レポーティングなども実行可能だ。
Alteryx製品を導入した国内企業の1つが、プラント建設などを手掛ける東洋エンジニアリングだ。同社はエンジニアリング領域におけるコアコンピタンスである「技術力」「パートナリング構築力」「マネジメント力」「デザイン力」の4つを、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の注力領域として定めている。DX戦略の定量的な目標として、粗利額を3倍にして、投入MH(マンアワー)を2分の1にすることで、生産性を約6倍に向上させることを掲げている。
東洋エンジニアリング DXoT推進部の瀬尾範章氏は、Alteryx製品を同社業務で適用した分野を幾つか取り上げた。その1つが、配管の3Dモデルと熱応力計算の整合性チェックだ。以前は紙ベースで配管の形状や、サポートタイプの整合性をチェックしていたが、Alteryxのツールを使うことで自動化させた。
この他にも、配管サポートモデルの選定を一部自動化することで設計時間を50%短縮した。瀬尾氏は「これまでは人海戦術で人間のオペレーターが、数百万点の3Dモデルを1つずつクリックして選定していた。Alteryx製品を活用することで自動配置が一部可能になった」と語る。これらの業務自動化の成果で、大幅なリードタイム削減につながるビジネスプロセスエンジニアリングを実現した。
Alteryxで生成したデータを基にして、建築現場をデジタルツインで再現するというプロジェクトも推進している。瀬尾氏はAlteryx製品の導入によって「想定していた効果の90%を現実化できた」と説明する。Alteryx製品に対するユーザーの習熟度を高めるために、開発チームと協力しながらDevOps(デブオプス)を実行することで、さらに大きな効果を得られるようにする。
企業におけるデータ活用では、データの生成や収集、前処理といったプロセスが重要であるとともに、大きな労力を要するとして課題視されている。瀬尾氏はAlteryx製品の導入による効果を、「業務を実行しているだけで、データの生成から前処理までが自動的に行われ、“使えるデータ”が自動的に生まれてくる。このプロセスでのコストを減らせば減らすほど、データ活用で得られる価値は増幅していく」と説明する。
Premier Successで工数削減の効果加速
Alteryxが今回発表したPremier Successは、同社製品のユーザーに向けて、社内での利用拡大のためのサポート、コンサルティングサービスを、同社の専任スタッフが提供するというものだ。利用拡大のための仮説立案や、データ分析環境の設計/構築、テスト、導入や学習支援などを行う。
ユーザーのエグゼクティブ層と、導入前に設定した目標と導入後の進捗に関して定期的に協議する。組織横断的にデータ活用を進めるためのCoE(Center of Excellence)の設置や、Alteryx製品について詳しい知識を持つ人材の育成、Alteryx製品のテクニカルレベルに関する認定資格取得、ユーザー企業間のコミュニティー強化などもサポートする。この他、ハッカソンイベントの開催や、ROI(投資利益率)算定なども支援する。
アルテリックス・ジャパン カントリーマネージャーの宇野林之氏は「データ分析の環境提供をするだけでは、活用が進まない。業務サイドの利用を進めることが、企業のデータ分析の課題としてある。そこを下支えするのがPremier Successだ」と説明する。
東洋エンジニアリングでも、97人のエンジニアがPremier Successのプログラムに1年間参加して、「Advanced(上級認定)」と「Core Certification(初級認定)」の認定資格を約半数が取得した。瀬尾氏は認定資格取得の効果について、Alteryx製品の開発速度が加速しており、「2025年までに投入MHの50%を削減する目標だが、Alteryxを活用したことで既に30%の削減を達成できた」と語る。認定資格の取得者数と、削減効果には強い関係性が認められるという。
Alteryxは、今後注力する国内展開の戦略として、パートナー企業との連携によるエコシステム拡大や、大企業向けのデータ活用の啓蒙活動、既存顧客への支援強化などを挙げている。
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