SUBARUは次世代EyeSightで死亡事故ゼロ実現へ、ステレオカメラ×AIは相性抜群:安全システム(3/3 ページ)
SUBARUは、2020年12月に東京の渋谷に開設したAI開発拠点「SUBARU Lab」におけるADAS「EyeSight(アイサイト)」の進化に向けた取り組みとAMDとの協業について説明した。
EyeSightで使用しない部分を削減しつつSUBARU向け最適化回路を追加
SUBARU Labで研究開発しているAI技術を次世代EyeSightに搭載するためには、高いAI処理性能を備えながら、車載要件を満たすために消費電力と発熱は一定以下である必要がある。また、2030年までの死亡事故ゼロ実現に大きな役割を果たすことが期待される以上、全ての価格帯の車両に搭載できるようにコストも抑えなければならない。
そこで複数社による検討から選ばれたのが、AMDのVersal AI Edge Series Gen 2である。さまざまなインタフェースとの接続と処理を担うFPGA回路、AIエンジン、アプリケーション処理を行うAPUを搭載しており、消費電力当たりのAI処理性能は前世代の「Versal AI Edge Series Gen 1」の3倍に引き上げられており、高いAI処理性能と一定以下の消費電力と発熱を実現可能になる。
次世代EyeSightでは、Versal AI Edge Series Gen 2からEyeSightで使用しない部分を削減しつつ、ステレオカメラのデータ処理をはじめとするSUBARU向け最適化回路を追加する。これによってコスト削減が図れるという寸法だ。
AMDとの協業体制は複数社による検討を終えた2023年後半から始まっており、現在はSUBARU向け最適化回路の設計を進めている段階にある。まだ、デバイスの搭載位置をステレオカメラユニットにするか、制御ECUにするかなどの仕様は固まっていない。一般向けVersal AI Edge Series Gen 2の量産開始時期が2025年末となっていることから、SUBARU向け製品も同時期に量産されることを考えると、次世代EyeSightは早ければ2026年中に登場する可能性がある。
次世代EyeSightに搭載する機能については「現時点で回答するのは難しい」(柴田氏)としている。今回の会見で雪道での自動走行技術を見せたことからも、一般道における自動運転と関わる予防安全機能なども想定されるが「一般道の環境は非常に複雑であり、どのような機能で運転をサポートするべきか判断が難しい。実際に機能として落とし込むことがとても重要であり、これから検討していくことになるだろう」(同氏)としている。
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