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Simulation Governanceの文化カテゴリー「経営層」と「組織文化」の診断結果シミュレーションを制する極意 〜Simulation Governanceの集大成〜(10)(1/2 ページ)

連載「シミュレーションを制する極意 〜Simulation Governanceの集大成〜」では、この10年本来の効果を発揮できないまま停滞し続けるCAE活用現場の本質的な改革を目指し、「Simulation Governance」のコンセプトや重要性について説く。引き続き、各サブカテゴリーの項目のポイントやレベルの意味を解説しながら、詳細な診断データを眺めていく。連載第10回では、文化カテゴリーの「経営層」と「組織文化」にフォーカスする。

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 シミュレーション・コンサルタントの工藤啓治です。これまでSimulation Governance(シミュレーションガバナンス)診断のコアカテゴリーである技術活用について詳しく解説してきました。

 今回は「文化」のカテゴリーについて見ていきましょう。技術活用が前線部隊だとすれば、文化体制は後方支援部隊といえるでしょう。派手ではないですが、後方支援が弱体化すれば勝つことはできないですし、後方支援こそ着実に育てることではじめて成果が出るものなので、避けては通ることのできない重要なテーマなのです。

⇒連載バックナンバーはこちら

文化カテゴリーの診断結果

 企業の規模にかかわらず、企業文化は全ての社員とその業務に影響を及ぼします。皆さんもよくご存じの通り、長年にわたって優れた業績を上げている企業は、おのずから素晴らしい企業文化を持っていることがほとんどです。逆に、業績が上がらず社員が疲弊している会社は、企業文化の視点でも未熟であることが多いのです。

 “デジタル化”という大きなスコープの一部であるSimulation Governanceは、デジタル化にどのように対峙(たいじ)しているかという企業文化の影響を直接受けることは明らかですので、文化の2つのサブカテゴリーである「経営層」と「組織文化」に関する9つの設問は、いずれもデジタル化に関わっています。例によって、表1図1に診断結果を示します。

「文化」の診断結果平均、標準偏差、最大
表1 「文化」の診断結果平均、標準偏差、最大[クリックで拡大]
「文化」の診断結果ヒストグラム
図1 「文化」の診断結果ヒストグラム[クリックで拡大]

 前回の図3で9カテゴリーの平均値を並べて、管理の仕組みの平均値が低いことを指摘しましたが、今回は経営層の平均値が最高値「3.16」で、組織文化の平均値が次の「2.90」となっていることを、あらためて確認してみてください。実は、筆者は診断を実施する前まで、この2つが一番低いのではないかと想定していました。日本のデジタル化のレベルが全般的に低いことから、文化的にも低い点数が出るのではないかと思い込んでいたのです。ところが、実際にフタを開けてみると、低いどころか一番高いという結果でしたので、驚いたわけです。その点も念頭に置きながら、結果を分析していきたいと思います。

 まず、ヒストグラムの形をざっと眺めてみてください。これまで見てきた技術活用の診断結果は総じて4〜5の高い点数が少なく、1〜3にバイアスされたヒストグラムが多かったのですが、今回の文化に関する9つの設問のヒストグラムは、おおむねきれいな正規分布に近いことが見て取れます。

 このことは、文化的側面においてボトルネックとなり得ることはあまりないとも受け取れますが、技術活用という前線部隊の平均値が低いこととのギャップがあるため、そのギャップが生じている背景を分析する必要があります。ともあれ、一つ一つ見ていくとしましょう。

文化カテゴリーの「経営層」に着目

 まずは、1つ目のサブカテゴリーである経営層について見ていきましょう。

A1「危機意識」

 A1「危機意識」の設問は、“経営層は、会社/業界としての危機感を持っていると感じますか?”です。全40項目の中で、最も高い平均値「3.44」となっており、ヒストグラムも上位の方に偏った分布になっています。これは、経営層が危機意識を持っているというメッセージを発信しており、それを社員も把握しているという状態を意味します。「危機感は常に持っている。重要なのは、そこからの行動指針だ」といったコメントも見られました。

A2「ビジョン」

 A2「ビジョン」の設問は、“会社は、10年を超えるビジョンを持っていますか?”です。A1の危機意識が高ければ、それに相関して高くてもよさそうですが、意外と平均値は低めに出ており、分布の低い方にシフトしています。これは、危機意識を持っていたとしても、長期ビジョンの策定までには至っていないというズレがあることを示しています。コメントにあった「環境活動など、一部では10年を超えるビジョンや実施計画が示されているが、事業面での明示は中期経営計画まで」という状況が典型的かもしれません。

A3「デジタルリテラシー」

 A3「デジタルリテラシー」の設問は、“経営層のデジタル理解度はどのぐらいと考えますか?”です。ヒストグラムは、完璧に対称の正規分布になっていますので、深刻な課題には見えないように思われますが、もしかすると国外の企業と比較した場合、もっと右側に分布している可能性も考えられます。その場合、3近辺の平均値であること自体が大きな問題であるかもしれないのです。ここでは「顧客接点へのデジタル化推進も積極的に発信している」「デジタルスキル研修を実施している」「全社員がDX(デジタルトランスフォーメーション)の基礎を身に付けている」など、ポジティブなコメントが目立ちました。

A4「変革リーダーシップ」

 A4「変革リーダーシップ」の設問は、“経営層は、変革に前向きでリーダーシップがあると思いますか?”です。これに対しての診断は、A1の平均値に次ぐ高い値「3.35」となっています。この点を見る限りは、デジタル変革に向けてのベクトルはしっかりとしているように思われます。ここでは「現経営の判断スピードは非常に速く、方向も良い」といったポジティブなコメントがあった他、「変革に対して現場任せ。現場の間違った方針をとめることもできていない」との厳しい意見もありました。

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