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知らないと取り返しがつかなくなる金型の費用と作製期間の話ベンチャーが越えられない製品化の5つのハードル(9)(1/2 ページ)

連載「ベンチャーが越えられない製品化の5つのハードル」では、「オリジナルの製品を作りたい」「斬新なアイデアを形にしたい」と考え、製品化を目指す際に、絶対に押さえておかなければならないポイントを解説する。連載第9回は、金型費用と金型作製期間について取り上げる。

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 製品化を行うモノづくりベンチャー企業にとって、「金型を作る」ことは製品化ビジネス自体に大きな影響を及ぼす。そのため製品企画の段階から、金型を作るか否かは決めておく必要がある。基本的には、体裁に樹脂部品があれば金型は必要だ。板金部品やダイカスト部品は、想定する生産台数によって金型を作った方が製品コストを安くできる場合がある。よって、あらかじめ“金型を作るときの部品コストと金型費用”と“金型を作らないときの部品コスト”のおおよその見積もり金額を比較しておくことが大切だ。

 金型を作製すると決まれば、主に次の3つの点に配慮しなければならない。

  • 部品形状(金型で作製する部品には、金型特有の形状や形状の制限がある)
  • 金型費用(金型費用は高く、資金の準備が必要だ)
  • 金型作製期間(金型発注から生産開始まで約3カ月が必要だ。製品化日程に盛り込む必要がある)

 部品形状に関しては、連載第8回で説明した。今回は、金型費用と金型作製期間について取り上げる。

金型費用

 金型費用は、おそらく多くのベンチャー企業が想定しているよりもはるかに高額だ。樹脂部品の金型費用は、PCのマウスくらいの大きさの1部品で約200万円になる。40型の液晶テレビの前面外枠(ベゼル)の金型費用は約1000万円である。

金型費用は高額である
図1 金型費用は高額である[クリックで拡大]

 筆者があるベンチャー企業の相談に乗ったときのことだ。その企業は、自社のアイデアでノートPC向けの携帯スタンドの製品化を進めていた。試作部品を何回も作り、検証を重ね、いよいよ金型を作製する段階になった。補助金は1000万円を獲得しており、それでスタンドの金型費用は十分にまかなえると考えていた。

 そのやりとりの中で、ベンチャー企業の担当者が「この部品、1部品の金型費用はいくらくらいですか?」と質問してきた。これに対して、筆者はすぐさま「700万円くらいでしょう。だいたい同じサイズの部品が2つあるので、合計1400万円といったところです」と回答したところ、ベンチャー企業の担当者は「あっ、もうダメだ。お金がない……」と言ったのだ。もちろん、金型費用以外の開発設計費も必要である。金型費用は、合計200〜300万円程度と想定していたようだった。この後、そのベンチャー企業は製品化の日程を大幅に延期し、再び資金集めを始めた。

 金型費用は、部品のサイズでおおよそ決まる。3Dデータ(2D図面)があれば、部品メーカーで見積もりが取れる。たとえ設計がまだ始まっておらず3Dデータがなくても、製品企画をしっかりと立てていれば製品の形状/サイズはおおよそ決まる。それに合わせて部品の形状/サイズ/材料も決まってくるため、それで簡単なイラストを描けば金型費用はおおよそ想定できる。もし、分からない場合には、部品メーカーや専門家に相談することをオススメする。

イラストだけでも金型費用はおおよそ想定できる
図2 イラストだけでも金型費用はおおよそ想定できる[クリックで拡大] ※画像提供:筆者

 最近は、樹脂の3Dプリンタで試作を繰り返して検討するベンチャー企業をよく見掛けるる。PCで設計した3Dデータが数時間後には手に取れる部品になるので、製品のイメージを把握したり、部品形状の確認をしたりするにはとても便利だ。簡易的な強度試験なども行うことができる。だが、その部品の金型費用がいくらになるのかを常に意識しながら3Dプリンタを使ってほしい。試作と検討を重ねて部品形状が完全に決まった後に、金型費用が足りないことに気づいて、製品化を断念するのは避けたい。

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