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イチから全部作ってみよう(7)正しい要求仕様書の第一歩となるヒアリングの手順山浦恒央の“くみこみ”な話(176)(1/3 ページ)

ECサイトを題材にソフトウェア開発の全工程を学ぶ新シリーズ「イチから全部作ってみよう」がスタート。シリーズ第7回は、要求仕様フェーズで作り上げる正しい要求仕様書に向けた第一歩となる「ヒアリング」について解説します。

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1.はじめに

 山浦恒央の“くみこみ”な話の連載第170回から、入門者をターゲットとして、「イチから全部作ってみよう」というシリーズを始めました。このシリーズでは、多岐にわたるソフトウェア開発の最初から最後まで、すなわち、要求仕様の定義、設計書の作成、コーディング、デバッグ、テスト、保守までの「開発フェーズ」の全プロセスを具体的に理解、経験することを目的にしています。第170回を読んでいない方は、以下のリンクから一読することをおススメします。

⇒連載「山浦恒央の“くみこみ”な話」バックナンバー

 今回からは、ECサイトを例題として、要求仕様フェーズの開発手順を一歩ずつ説明します。その中でも今回のテーマは、「ヒアリング」になります。

2.要求仕様フェーズとヒアリング

 要求仕様フェーズの大まかな開発手順を下記に示します(図1)。

図1
図1 要求仕様フェーズの開発手順[クリックで拡大]

 図1は、要求仕様フェーズの開発手順です。発注側が企画を考え、それに基づいて開発側がヒアリングを行います。ヒアリングで聞いた情報は、ヒアリングシートに記録し、要求仕様書となります。最終的に、要求仕様書を発注側とレビューし、問題がなければ完了です。

 今回は、この中の「ヒアリング」について解説します。

3.ヒアリングの重要性

 人生には、「結婚式を挙げる」「家を建てる」「車を買う」などさまざまなイベントがあります。これらを、全て一人で実行することは困難で、お店の人やプランナーに相談することが一般的ですね。この時、自分の要望をしっかり伝え、実行してもらうことは非常に大変です。

 例えば、「結婚式を挙げる」ことを考えてみましょう。結婚式は通常一度きりで、新郎新婦の夢と希望が詰まった大事なイベントです。そのため、ウェディングプランナーさんに依頼し、式のサポートを依頼します。この際、プランナーとの打ち合わせをキッチリ行い、合意をしておかないと、記念すべき日が最悪の日になってしまうでしょう。

 ソフトウェア開発の世界でも、同様に発注側の要望をヒアリングします。今回テーマとするECサイトの立ち上げで言えば、発注側はECサイトで扱う商品の販売や店舗の運営のプロであっても、ソフトウェアのプロではありません(結婚式でも同じです)。そのため、夢と希望が詰まった要望を、開発側が実現可能な要求へ落とし込み、両者で合意を得る必要があります。

 結婚式の式次第、進行、経費は、難解でも複雑でもなく、式を挙げる2人(発注側)と、式場側(受注側、開発側)とも、お互いに理解できる共通の用語や言葉を使って打ち合わせます。一方、銀行業務、証券取引、商標や特許の申請業務、半導体の生産ライン制御のような専門性が非常に高い業務をコンピュータ化する場合は、そうはいきません。

 例えば、証券業務では「プットオプション」「踏み上げ」「クーポンスワップ」「逆日歩」「カバードコール」「劣後債」「メジャーSQ」「ザラ場」「オプションプレミアム」「ETF」「QT」のように、ソフトウェア開発技術者が人生で初めて聞く言葉が満載です。そして、証券業務の担当者にも、「マルチプログラミング」「仮想記憶」「TCP/IP」「プロセス間通信」「スパイラルモデル」「C1カバレッジ」「機能後退」「状態遷移モデル」「情報隠蔽」「リアルタイムOS」「ポリモーフィズム」の意味やメカニズムに関する知識はありません。

 発注側と開発側が、一つのシステムを開発する場合、お互いの技術領域に入り、理解してシステムを作る必要があります。その第一歩が、「発注側が、システムの導入により、何を期待しているか?」を発注側が開発側にキチンと伝達し、開発側はそれを把握しなければなりません。

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