試行フェーズを脱した通信業界の生成AI活用 MWC 2024レポート(後編):世界の展示会で見たモノづくり最新動向(4)(1/2 ページ)
この連載ではMONOistとSalesforceのインダストリー専門家が協力して、世界各地の展示会から業界の最新トレンドをお届けします。第4弾では前回に続き、2024年2月26〜29日にかけてスペインのバルセロナで開催されたMWC Barcelona 2024から、通信業界の生成AIのトレンドを紹介します。
通信事業者の生成AIへの取り組み状況とユースケース
前回のMWC Barcelona 2024(MWC 2024)レポート前編では、生成AI(人工知能)のトレンドを紹介しました。今回のMWC 2024レポート後編では、通信事業者の具体的な生成AIの活用についても見ていきます。以下に、いくつかの大手通信事業者の取り組みやユースケースを紹介します。
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Deutsche Telekom
Deutsche Telekomは基調講演の中で、CEOのティム・ヘットゲス氏が自社の取り組み内容やユースケースを共有しました。直近で400以上の生成AIなどAIのユースケースを検証し、効果の高かった領域に優先的に取り組んでいるとのことです。
同社では、カスタマーサービスのチャットbotで問い合わせの初回解決率を50%改善すると共に、社員の問い合わせ対応を社員向けチャットbotで自動化しました。また、FTTH(Fiber To The Home)敷設のプランニングについて、生成AIを活用して敷設エリアの画像を分析し、ケーブル敷設の場所や掘削規模などを推測して作業を70%効率化したと明らかにしました。フィールドテクニシャンのチャットbotによる技術サポートを実施する他、人材確保が難しくなってきたレガシープログラム言語で構築したコードを現在普及しているプログラム言語に書き換えることで、プログラムのブラックボックス化を避け、開発人材確保を容易にしたそうです。
講演の最後には「Appがほしい人なんているのか?」「5〜10年後には誰もAppを使わなくなる」というインパクトのある発言と共に、将来的なビジョンとして「App-Free Phone」というコンセプトを紹介しました。そして、前編で紹介した通り「Global Telco AI Alliance」を介して、業界特化型のLLMも開発検討中であることを明かしました。
Telstra
TelstraのCEOヴィッキ・ブレイディー氏は、基調講演の中で、生成AIを含むAI活用は経営戦略の一環だと発言しました。
現在同社では、効果のインパクトが大きい全社重点課題領域にフォーカスして生成AIの活用を進めています。カスタマーサポートでは生成AIアシスタントを活用し、2000以上のナレッジから必要な情報を瞬時に抽出します。また、生成AIの精度向上に向けてデータの整備を進めており、データやシステムのクラウドへの移行を推進すると共に、データプラットフォームも50から30までに統合し、2025年6月には5つに集約する予定だそうです。データがある程度統合されたことで、AI活用時の検証作業も5週間程度の短い期間で実施可能になったと説明しました。
BT
BTは2021年11月から生成AI活用に着手し、ROI(投資利益率)を最大化する領域でユースケースを試行してきました。90の領域で検討を進め、類似用途をグループ化し、優先度の高い11領域に重点的に投資しました。BTでCDIO(Chief Digital and Innovation Officer)を務めるハーミン・メータ氏は講演の中で、「AI活用で重要なのはデータです。検討当初はデータが分散しており、3%程度のデータしか一元化できていなかったため、あまり成果が出ませんでした。その後、データクレンジングとデータ統合を進め、現在は80%以上のデータをAIに活用できる状況になりました」と語りました。
BTでは、AI活用の効果として1億5200万ポンド(約290億1300万円)以上を実現しているとのことです。また、生成AIのアウトプットのバイアスはリスクではあるものの、それに勝るメリットを享受できる点に触れ、リスク管理をしっかり実施すると共に、改善に向けてはデータモデルやトレーニングデータの質が非常に重要だと強調しました。
ここまで、通信事業者の主な生成AI活用の取り組みやユースケースを紹介してきましたが、複数の講演の中で生成AIの実例が使われていた点にも触れたいと思います。
Telefonicaの基調講演では、生成AIが作成したバルセロナの画像と実際の画像を比較しました。また、Capgeminiのカミル・ジュエット氏は、生成AIで作成した自身のアバターが講演冒頭で自分を紹介する、という演出で登場しました。
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