約半数がOTサイバー攻撃の被害に、低い自動車産業のOTセキュリティ成熟度:産業制御システムのセキュリティ(2/2 ページ)
産業制御システム向けのセキュリティを展開するTXOne Networksは、2023年版の「OT/ICSサイバーセキュリティレポート」を発表した。
低い自動車メーカーのOTセキュリティ成熟度
これらのOTセキュリティの対策状況はどうなっているのだろうか。OTセキュリティのガイドラインやフレームワークは世界各国で生まれているが、2024年2月にはNIST(米国標準技術研究所)による「NIST Cybersecurity Framework」の最新版である「NIST Cybersecurity Framework 2.0」がリリースされている。また、フロスト&サリバンではOTセキュリティ成熟度レベルフレームワークを制定している。
このOTセキュリティ成熟度を国別で見た場合、日本とドイツはレベル3までのレスポンシブル(防御と検知をカバーする堅牢な対策)までの対応にとどまっている結果となった。一方で、米国やUAEは、レベル5の最適化の比率が高く、統合的な取り組みが進んでいることが分かる。
一方、業種別で見た場合、石油ガス産業では34%がレベル5の最適化へと進んでいる。しかし、自動車製造業は91%がレベル3となっており、レベル5の比率は2%にとどまっており、プラント系産業に比べると大きく遅れていることが分かる。
日本ではOTセキュリティにおける「ガバナンス」が課題
リソースや予算配分を踏まえ、今後12カ月で取り組むOTセキュリティ領域について聞いた質問では「データセキュリティ」「テクノロジーインフラのレジリエンス」「個人情報の管理、認証、アクセス制御」などが上位となった。
ただ、日本では「ガバナンス」が最多で他国の2倍近い回答比率を占め、大きな違いがあることが浮き彫りになった。日本企業においては、OTセキュリティのガバナンスがきいておらず、技術面の問題よりも体制面の整備が重要になっていることが分かる。また、セキュリティベンダーがなどが訴えている「リスク評価」については米国で突出して高い回答比率となっているが、その他の国ではそれほどまだ重要視されていないことが明らかとなった。
OTサイバーセキュリティに求められる機能としては「セキュリティ分析、監視、評価ツール」「セキュリティコンプライアンス管理と監視」「既存の運用上の脆弱性に対する攻撃の検知」などが上位に挙がっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 7割が“人質”経験済み、ランサムウェアが猛威を振るう工場セキュリティの今
産業制御システム向けのセキュリティを展開するTXOne Networksは、2022年版の「OTサイバーセキュリティレポート」を発表した。 - 工場向けサイバーセキュリティのトータル支援サービスを3社で提供
大日本印刷は、工場向けセキュリティ対策に関する事業の拡大に向けて、ユニアデックス、TXOne Networks Japanと協業し、工場向けセキュリティのトータル支援サービスを提供する。 - TXOneがOTセキュリティの新コンセプト「CPSDR」を提唱、製造業の価値軸を重視
TXOne Networks Japanは、同社が展開するOT(制御技術)セキュリティ製品の新たなコンセプト「CPSDR」を説明するとともに、このCPSDRに基づいて開発した新製品を紹介した。 - 工場セキュリティ特有のニーズに応える、パートナー拡大を進めるTXOne Networks
TXOne Networks Japanは「日本ものづくりワールド 2023」」に出展し、産業制御機器向け専用のセキュリティの浸透を訴えるとともに、日本での取り組みの進捗度についてアピールした。 - IEC 62443とは何か、工場のサイバーセキュリティ対策のカギを握る国際標準を解説
スマートファクトリー化に伴い工場でもネットワーク化が進む中で、サイバーセキュリティ対策が欠かせないものとなりつつあります。しかし、製造現場ではこれらのサイバーセキュリティ対策のノウハウもなく「何から手を付けてよいか分からない」と戸惑う現場が多いのも現実です。その中で活用が進んでいるのが国際標準である「IEC 62443」です。本連載では、「IEC 62443」の概要と活用方法についてお伝えします。 - スマート工場で見逃されている2大侵入ポイントとは?
スマート工場化が加速する一方で高まっているのがサイバー攻撃のリスクである。本連載ではトレンドマイクロがまとめた工場のスマート化に伴う新たなセキュリティリスクについての実証実験研究の結果を基に注意すべきセキュリティリスクを考察する。第1回では、工場の「スマート化」とは何かを定義するとともに、そこから見えたスマート工場特有の侵入経路について解説する。