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【総まとめ】サステナブル設計に取り組むために必要なことサステナブル設計とデジタルモノづくり(7)(2/2 ページ)

地球環境に配慮したモノづくりの実践はあらゆる企業に課せられた重要なテーマの1つだ。本連載では、サステナブル設計の実現に欠かせないデジタルモノづくりにフォーカスし、活用の方向性や必要な考え方などについて伝授する。最終回となる連載第7回では、これまでお届けしてきた内容の重要ポイントをおさらいする。

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3Dスキャナーとサステナブル設計

 連載5回「3Dスキャナーを活用したサステナブルなモノづくりとは」では、製造業における検査や組み立て作業の検証、現物の保管の代替などで3Dスキャナーを活用することで、サステナブルなモノづくりにつながることを紹介しました。

 3Dスキャナーを活用することで、検査をデジタル化でき、紙の使用量の削減、輸送に伴う余計なコストや時間の削減、船やトラックからのCO2排出量の低減といった効果が得られます。

 製造業だけでなく、医療やヘルスケア分野、文化財保護などでも3Dスキャナーが活用できることも説明しました。また、「3Dスキャン=3D CADデータ」ではないため、スキャンデータの編集/修正作業が伴うことにも触れました。

3Dプリンタとサステナブル設計

 連載6回「3Dプリンタ活用によるサステナブルなモノづくり事例」では、3Dプリンタを活用したサステナブルなモノづくりをテーマに、3Dプリンタで使用する材料と使用後の取り組みについて紹介した他、実際のパーツ製作の事例などを紹介しました。

 廃材となった熱可塑性樹脂をリサイクルしたものを3Dプリンタの材料に使用している事例やバイオプラスチックを利用した造形技術開発の事例、広葉樹の廃材を原料に、3Dプリンタで家具の製作を行っている事例などを紹介しました。

 3Dプリンタ活用は、保守パーツやオプションパーツの在庫、金型管理の削減を考えたときにも効果を発揮します。3Dデータがあれば、いつでも3Dプリント可能なので、余計な在庫を保管する必要がなく、保管場所も不要になります。また、輸送に関して考えた場合、各拠点に3Dプリンタを配置しておけば、船やトラックなどで輸送する距離を減らすことができ、CO2排出量や輸送コストの削減にもつなげられます。

 3Dプリンタを活用していくためには、3Dプリンタの特徴を理解した「DfAM(Design for Additive Manufacturing:付加製造のための設計)」のスキルが重要となります。また、“3Dプリンタだけで作る”という発想を変えて、後処理(二次加工)として切削加工を施して高精度なモノを作るなど、技術を組み合わせて実現の方法を模索してみることも必要です。

 3Dプリンタと従来工法(切削加工など)を単純比較するとメリットが感じられない場合があるかもしれませんが、“プロセス全体”で比較するとともに、今後さらに強く求められるサステナブルなモノづくりの観点も加味した上で検討することを強くオススメします。

サステナブル設計の核となる3D CAD

 連載の中で何度も説明してきましたが、サステナブル設計を行うためのデジタルモノづくりを実践するには、その源泉となる3Dデータが必要であり、3D CADを用いた設計が必須となります。2D CADによる2D設計では“真のサステナブル設計”を実現することはできません。

サステナブル設計とデジタルモノづくりの関連図
図2 サステナブル設計とデジタルモノづくりの関連図[クリックで拡大]

 3D CADを用いた3D設計によって、実際にモノを作ってからのミスや手戻りを減らせるだけでなく、連載で紹介してきたデジタルモノづくりとの融合によって、サステナブル設計、環境に配慮したモノづくりを実現可能とし、より大きな効果へとつなげることができます。

 3D CADを使用した設計がサステナブルな設計の第一歩になります。既に3D CADで設計されているのであれば、もう一歩先に進むために、連載で紹介した内容に取り組んでみてください。環境に配慮した設計の実現だけでなく、QCD(品質/コスト/納期)の向上に確実につながります。

 高額な設備投資を行い、高度なことを実現する目標をかかげなくても、スモールスタートで着実に成果を積み上げていく道もあります。無料あるいは安価なサービス/設備を活用するなど、始めやすいところから取り組んでみて、問題点や課題を見つけ、PDCAサイクルを回し、目標達成を目指すのもよいでしょう。

 サステナブルな設計は、設計者だけが頑張っても実現できません。他部門の関係者とも3Dモデル(3Dデータ)を共有し、一緒になって考えて取り組むことが重要であり、社内や協力会社との連携も必須です。サステナブルな設計を進めるに当たり、システムやツール導入の必要性も当然出てきますが、それらを導入しただけではうまくいきません。きちんと管理/運用ルールを決めて、推進していきましょう。

 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。本連載の内容が、これからサステナブルな設計とモノづくりに挑戦する方々の参考になれば幸いです。 (連載完)

⇒ 連載バックナンバーはこちら

筆者プロフィール

小原照記(おばら てるき)

いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。


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