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アイキューブメカトロニクスで“課題解決型”提案を加速、安川電機の2024年FA インタビュー(1/3 ページ)

安川電機は市場環境の変化に対応した堅実な対応を進めながらも、新たなモノづくりコンセプトを実現するさまざまな製品やソリューションを次々に形にしている。2024年の見通しについて安川電機 代表取締役社長の小川昌寛氏に話を聞いた。

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 コロナ禍やそれに伴うサプライチェーンの混乱が収まる一方で、中国市場の停滞などFA業界にとって2023年は明暗が入り乱れる状態となった。その中で安川電機は市場環境の変化に対応した堅実な対応を進めながらも、新たなモノづくりコンセプト「i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)」を実現するさまざまな製品やソリューションを次々に形にしている。2024年の見通しについて安川電機 代表取締役社長の小川昌寛氏に話を聞いた。

2023年は受注残の解消で安定した業績に

MONOist 市場の現在の動向をどう見ていますか。

小川氏 オートメーション機器などの主力市場である、半導体産業向けと中国市場向けの2つの動きが鈍いことは2022年後半から予測できていた。2023年はその予測通りの動きとなり、想定以上に悪いことはなかったが全体的には市況感は良くなかった。中国市場については少し回復するかもしれないと期待していたが、結果として市場の動きは鈍いままだった。ただ、これらは想定通りだったため、1年間の動きとしてはほぼ計画通りということがいえるだろう。

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安川電機 代代表取締役社長の小川昌寛氏

 もともと2023年度(2024年2月期)が始まった時には、コロナ禍によるサプライチェーンの混乱などによりさまざまな部材不足が発生したため、多くの受注残を抱えていた。その中で部材調達が徐々に正常化し、受注残解消を進めてきたのが2023年だった。そのため、業績的には、新たな注文を取らなくても安定した販売ができるため、生産調整などもそれほど必要なく安定した状況が続いたといえる。

 ただ、受注残の解消が進む中、これからは販売量に合わせた効率的な生産を進めることが求められる。市場の全般的な動きは、2024年も前半は厳しいと見ているが、半導体関連も中国関連もいつかは再成長がある。その再成長のタイミングにいかに合わせられるかを見極めることが重要だ。消極的に生産を抑えることだけを考えずに、どちらにも動けるようにする。

需要地生産によるボトムアップ型のグローバルサプライチェーンを強化

MONOist 2023年は為替の変動も大きかったと思います。

小川氏 安川電機では基本的に需要地生産を強化し“地産地消化”を進めていく考えで、為替の影響度がある程度でバランスが取れるようにしている。ただ、日本で生産して海外に輸出していたり、基幹部品を国内で生産し海外工場で組み立てたりするケースは多い。現地生産比率は高い製品でも7〜8割で、日本生産の部品を採用している比率はまだまだ高いといえる。そのため、円安傾向が進むと総合的にはプラス傾向になる。

 ただ、重要なのは事業の強さであって、為替影響による結果に一喜一憂すべきではない。事業の本質的なところで重視しているのは、現地通貨ベースでの売り上げや利益が成長しているかどうかだ。為替変動に右往左往し生産地を国内に戻したり、海外の異なる地域に展開したりすることも考えていない。基本的な考えとして、世界各地の市場と真剣に向き合うためには、現地で開発、生産し、販売するという体制が必要だと考えているからだ。

 仕組みとして本社で統括することが必要な場合もあるが、サプライチェーンや各地での工場の情報など日々にさまざまな事象が影響を及ぼすようなことを、全て本社で判断しようとすると、忖度(そんたく)なども発生してコミュニケーションのズレも大きくなり、精度もスピードも落ちる。逆にボトムアップで構築していく方が精度も高く、現地で見たときにも信用につながる。全社最適な方針の徹底などは必要だが、現地に任せられることは任せていき、需要地での地産地消で強い体制を作ることができれば、それが頑強なグローバルサプライチェーンにもつながる。

MONOist 現地に任せすぎると、本社側で管理が難しい部分も出てくると思いますが、このあたりのバランスについてはどう考えていますか。

小川氏 基本的にはそれでも現地に任せられるものは任せた方がよいという考えだ。事業判断は顧客が見えていて、どこに商機があるかをより肌で感じられるところで行った方がよい。こうした動きをデータとして本社や各地域が把握できるようになっていれば大きな間違いも起こりにくい。B2Bで顧客が見えていれば、変曲点はそれほど多くはなく、過去のデータを見ると成長性などもある程度正確に予測することもできる。日常的に変化の様子をデータで見えるようにしておけば、こうした変曲点なども把握することもでき、現地で任せていてもある程度コントロールできる。これらの土台となっているのが、安川電機全社で進めているDX(デジタルトランスフォーメーション)活動である「YDX(YASKAWA digital transformation)」だ。さまざまな企業活動のデータ化や見える化が進むことで、本社と現地のバランスも取りやすくなってきている。

 これらについても完璧にできているかというとまだまだな部分も多いが、在庫の在り方や部材の確保の仕方などのコントロールを本社側でもできるように体制を整えてきている。例えば、世界共通で調達した方がよいものについては新たに2023年度に設置した調達本部により、一括調達を進めるようにしている。今後はさらに柔軟に対応できるようになり、経営効果を発揮できるようになるだろう。

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