AMDが8年半ぶりにローエンドFPGAの新製品「Spartan Ultrascale+」を発表:組み込み開発ニュース
AMDは、ローエンドFPGAの新製品「AMD Spartan Ultrascale+ FPGA(Spartan Ultrascale+)」を発表した。2015年11月発表の前世代モデル「Spartan-7」以来、約8年半ぶりの新製品となる。
AMDは2024年3月5日(現地時間)、ローエンドFPGAの新製品「AMD Spartan Ultrascale+ FPGA(以下、Spartan Ultrascale+)」を発表した。2015年11月発表の前世代モデル「Spartan-7」以来、約8年半ぶりの新製品となる。28nmプロセス採用のSpartan-7に対して、Spartan Ultrascale+は16nmプロセスを採用しており大幅な性能向上が図られており、Spartan-7と同世代のミッドレンジFPGAである「Artix-7」との比較でも、消費電力の30%削減や、約2.4倍のI/O対ロジックセル比などを実現している。現在は関連ドキュメントが公開されている段階で、2024年第4四半期に専用ツールの「Vivado Design Suite」を用いた設計が可能になる。サンプル出荷と評価キットの販売は2025年前半を予定している。
Spartan Ultrascale+は、組み込み機器の入出力インタフェースや基板の制御回路、IoT(モノのインターネット)/産業ネットワーク/ビジョンシステムなど幅広い用途で利用可能なローエンドFPGAである。外形寸法10×10mmが3品種、外形寸法12×12mmが4品種、外形寸法23×23mmが2品種の合計9品種での展開となる。ロジックセル数は1万1000〜21万8000、最大I/O数は304〜572、オンチップメモリの容量は1.77M〜26.79Mビットとなっている。また、上位の品種は帯域幅が16.3Gb/sのトランシーバーを4本もしくは8本搭載する。
外形寸法10×10mmを中心とする下位の品種は、前世代のSpartan-7やArtix-7と比べてI/Oの密度が高いことが特徴になる。例えば、ロジックセル数が1万1000と最も少ない品種である「SU10P」の場合、I/O対ロジックセル比は27となり、これはSpartan-7の3.5倍、Artix-7の2.4倍に達する。また、消費電力効率も高く、例えばSpartan Ultrascale+の「SU35P」は、ロジックセル数が同等となるArtix-7の「7A35T」に比べて消費電力を最大30%削減可能だ。
「Spartan Ultrascale+」の消費電力性能。FPGAファブリックの消費電力を最大30%削減可能で、ハードウェアIPのメモリコントローラーを搭載する品種であれば消費電力を最大60%削減可能だ[クリックで拡大] 出所:AMD
同社の「Zynq Ultrascale+」や「Aritix Ultrascale+」と同じTSMCの16nm Fin-FETプロセスを採用したSpartan Ultrascale+では、従来にない新たな機能も採用している。
Spartan-7やArtix-7では、FPGAファブリックに実装するDDR3対応のソフトメモリコントローラーだったが、Spartan Ultrascale+はLPDDR4x/5に対応可能なハードウェアIPを採用した。特にLPDDR5対応は、Ultrascale+の名前が付く製品では初対応となる。また、耐量子計算機暗号(PQC)に対応可能なセキュリティ機能も搭載している。
今回のSpartan Ultrascale+の発表では、AMDがFPGA製品群の長期供給をコミットしていることについても言及した。前々世代品である「Spartan-6」は2030年、Spartan-7とArtix-7は2030年以降、Aritix Ultrascale+やSpartan Ultrascale+については2040年以降も供給する方針である。
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