FPGAの力を引き出す3種の開発ツールとは:新・いまさら聞けないFPGA入門(後編)(1/3 ページ)
あらためてFPGAの基礎から最近の動向までを含めて解説する「新・いまさら聞けないFPGA入門」。後編は、FPGAの最大の特徴を引き出すのに用いる最新のツールと、FPGAの採用が広がっている新たな市場について紹介します。
前編ではFPGAというデバイスの特徴について解説しました。後編では、デバイス内の電子制御機能の大部分を変更できるという、FPGAの最大の特徴を引き出すのに用いる最新のツールを説明します。また、FPGAの採用が広がっている新たな市場についても紹介します。
長らくFPGAの設計には、RTL(Register Transfer Level:レジスタ転送レベル)が設計言語として使用されてきました。設計者のRTLをもとに、FPGAベンダーが用意しているツールからFPGAに書き込むダウンロードファイルが生成されていました。
しかし、ここ数年の間で高位合成コンパイラといわれるツールがFPGAベンダーからリリースされています。この高位合成コンパイラを利用することで、一般的なRTLと比較して約80%の設計コードを減らすことが可能になるといわれています。設計コードの減少に伴い回路の検証時間も少なくなり、より短い開発時間で製品をリリースできる環境が整いつつあるのです。
現在、FPGAベンダーが提供している高位合成コンパイラは3つあります。
- モデルベース(DSP)コンパイラ
- HLSコンパイラ
- OpenCLコンパイラ
また、これらのツールの特徴と対象ユーザーを以下の表1にまとめます。
ツール | 対象ユーザー | 特徴 |
---|---|---|
モデルベース(DSP)コンパイラ | アルゴリズム設計者 ハードウェア設計者 |
Simulinkで行うモデルベース開発用 IP開発用 |
HLSコンパイラ | ハードウェア設計者 | C/C++による開発 IP開発用 |
OpenCLコンパイラ | ソフトウェア設計者 | OpenCLよる開発 FPGA/ホストを含めたシステム設計用 |
表1 FPGAベンダーが提供する高位合成コンパイラの特徴と対象ユーザー |
3種の高位合成コンパイラの特徴
ここからは、各ツールの詳細を掘り下げていきます。
モデルベース(DSP)コンパイラ
DSPコンパイラは、マスワークス(Mathworks)のモデルベース開発環境「Simulink」で検証されたFPGAに最適化されたモデルについて、FPGAリソースを使った同等の機能をもった回路を生成してくれるツールとなります。FFT(高速フーリエ変換)などの高速な乗算器が必要な場合は、自動的にFPGAの専用リソースのDSPを使用してFmax(上限クロック周波数)を上げることが可能になります。以下に、マスワークスからリリースされている設計、評価環境とFPGAリソースの生成、評価環境の図を示します。
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