中国モノづくりで発生する品質不良の13の原因とカメラによる攻めの解決策:MONOist主催セミナーレポート
MONOist主催セミナー「持続可能な『攻めの品質管理』〜これからの品質管理の在り方とは?〜」に登壇したロジカル・エンジニアリング 代表の小田淳氏による講演「インライン検査による品質改善とカメラによる常時監視がもたらす可能性」の内容をお届けする。
MONOist編集部は、製造品質セミナー「持続可能な『攻めの品質管理』〜これからの品質管理の在り方とは?〜」を2024年1月30日にライブ配信した。本稿では、ロジカル・エンジニアリング 代表の小田淳氏による基調講演「インライン検査による品質改善とカメラによる常時監視がもたらす可能性」の内容をダイジェストでお届けする。
インライン検査による品質改善とカメラによる常時監視がもたらす可能性
不良品のほとんどは、作業方法や作業手順のミス、治具や装置の使用方法および設定の間違いといった“作業のバラツキ”が原因で生じる。こうした不良品をなくすには、まず、自由度のない作業方法を定めることだが、特に作業者の入れ替わりが激しい中国においては、作業者に長期的に同じ作業をしてもらうことは難しい。
この場合、作業者の動きをカメラで完全に把握して、定めた作業から逸脱する動きを認識し、作業者に注意を促すというやり方が効果を発揮する。各工程の製品/部品をカメラで監視するインライン検査からさらに一歩踏み込んだ、各工程の作業を常時監視することによる品質の現場管理の実現である。
小田氏は、中国での製品/部品の製造に長年携わってきた経験から、不良品が発生する原因について、「作業者が、作業標準書やQC工程表に沿わないやり方で作業をしているなど、ささいなことが原因になっていることが多い」と指摘。さらに、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、高画質カメラなどを活用すれば、「そのほとんどを解決できる」(小田氏)と続ける。
中国で不良品が発生する背景には、
(1)必要な作業を忘れる
(2)治具を正しく使わず作業をする
(3)異常な作業をする
(4)作業の順番を間違える
(5)装置の設定値を間違う
(6)組み立てNGを見過ごす
(7)員数を数え間違う
(8)治具が壊れている
(9)治具をなくしてしまい、その結果手作業にした
(10)部品自体が不良品だった
(11)部品が間違っている
(12)製造ラインからの部品の移動時の傷など、ライン外に問題がある
(13)気付かないうちに材料が代わっている“サイレントチェンジ(材料が変わる)”が発生した
など、大きく13の原因が考えられるという。
そして、これらの対応策として、(1)〜(5)に関しては作業標準書に記載する、(10)と(11)は部品の受け入れ検査で対応する、(6)と(7)は目視のインライン検査で確認する、(8)と(9)は定期的な監査で治具を調べるといった方法が取られる。なお、(12)と(13)については現在対策が行われておらず、メーカーを信頼するしかない内容だ。
こうした現状に対して、小田氏はカメラなどの機器を用いた“攻めの品質対応”による不良品の回避策を紹介した。
まず、不良品発生原因の(1)〜(4)は「1.カメラの常時監視」で対応していく。(5)(8)(9)は「2.カメラによる定期監視」で解決を図る。同じく(12)と(13)についても「2.カメラによる定期監視」である程度防ぐことが可能だ。さらに、(6)(7)(10)(11)に関しては「3.カメラによるインライン検査」で確認する。「これらの3つの方法(カメラによる常時監視、定期監視、インライン検査)により、不良品を招く13の原因のほとんどを解決できる」(小田氏)。
「1.カメラによる常時監視(定点監視)」は、作業者の手元をカメラで常に監視することで不良品の発生を防ぐ。現在は、人間の骨格の動きを判断し、異常作業をしているとアラームを出して知らせるシステムも製品化されている。これにより、例えば、アルコール塗布の有無や、ビスの取り付け順などを監視できる他、異常な動作をしている人がいるかどうかも素早く発見できる。
「2.カメラによる定期監視」は、カメラをパンニング(カメラを固定したまま、フレーミングを水平方向や垂直方向に移動させる技術)させて、定期的に監視するものだ。カメラを全体が見渡せる高い位置に取り付け、回転やズームさせて装備の設定値が正しいかなどを確認する。また、倉庫にある材料や部品のラベルを見て、適切なものが納入されているかを判断することにも役立つ。さらに、治具の状態を見たり、カメラをパンニングすることでラインの部品移動の状況をチェックしたりできる。
「3.カメラによるインライン検査」では、AIや高画質カメラによって、組み立てNGや部品不良、員数の数え間違いなどの判定の他、バーコードの読み取りにより、部品の新旧などのチェックも行える。さらに、将来的には「文字を読み取って誤記を見つけ出すシステムが開発されることも予想される」(小田氏)としている。
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