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3Dプリント製法の特殊性を踏まえた開発の重要性3Dプリント材料、この10年程度の進化(2)(2/3 ページ)

本連載では活用事例が増えつつある3Dプリント材料の基礎や最新の動向と活用事例について紹介します。第2回では3Dプリントと既存の成形方法との違いや企画段階からの考え方などについて、実例を挙げて解説します。

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品質評価の難しさ

 1つ1つ違う形状を安定的に品質評価する手法の確立は業界全体の課題である。特にインフィルなど内部構造があるものは外観検査だけでは内部の品質ばらつきを確認することができないため、造形状態を常にモニタリングしておくなど、新しい品質評価手法が求められている。

 3Dプリント製法を用いるメリットの1つであるカスタムまたはオーダーメイドの製造を行うためには、これらの品質評価に関する課題を解決する必要がある。しかし、実際にはまだそのハードルが高く、製品分野ごとに個別の評価手法が模索されている。そのため、3Dプリントを活用した製品でも、多くの場合は数種類の規格形状の生産を行っている段階であると思われる。内部構造を含めた品質評価手法が整えば、一品一品形状が異なる製品のオーダーメイド生産が可能となるだろう。

後加工による品質向上手法

 また、3Dプリントというと、スイッチを押すと完成品が出てくるイメージを持つ方も多いと思うが、現状はまだそうではない。それぞれの造形方法によって、サポート材料の取り外しや粉末の除去、洗浄、二次硬化などの作業が必要であり、一部では自動化設備が出てきているものの、現状は多くの工程が作業者による手作業で行われる。

 その上で、研磨や塗装、他部品との組み立てなどを行い、最終製品となる。この基本的な流れは既存の他の成形技術と変わらない。全てを3Dプリントのみで完結させるのではなく、既存の加工技術と組み合わせることで製品の品質を向上させた事例は多く存在する。

 この特徴をうまく生かした一例として、リコージャパンによる車のバンパー制作の事例が挙げられる。MEX方式をはじめとする3Dプリント製造では、表面に現れる樹脂の積層跡が審美性や他部品とのアセンブリ性の観点から懸念されることが多い。解決策として、他の製造技術を用いた製品では、成形後に研磨や塗装などを行う場合もある。

 これらの仕上げ作業を、3Dプリント品にも適用したのが、リコージャパンのバンパーである。3Dプリント後に表面の積層痕を研磨し、通常の射出成形で作られた自動車のバンパーと同様に塗装を施すことで、見た目の課題を解決した。リコージャパンでは、造形段階から後加工での完成を想定しておくことによって、あらかじめ後加工で消すことができるような積層ピッチを造形条件として意図的に設定していたのではないかと予想する。

 この事例のような手法により国外の企業でも既に製品化を行っている。例えば、スペインのCAFではトラムのバンパーの一部が既に3Dプリント製に置き換わっており、公道を走るトラムの車両でも試験的に運用されている。小型の造形物の表面処理では、樹脂3Dプリント後の処理技術を展開するドイツのDYE MANSIONの設備が注目を集めている。


3Dプリント品に通常のバンパーと同様の仕上げの処理/塗装を行うことで、見た目の問題をクリアしている[クリックで拡大] 出所:リコージャパン

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