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3Dプリント製法の特殊性を踏まえた開発の重要性3Dプリント材料、この10年程度の進化(2)(1/3 ページ)

本連載では活用事例が増えつつある3Dプリント材料の基礎や最新の動向と活用事例について紹介します。第2回では3Dプリントと既存の成形方法との違いや企画段階からの考え方などについて、実例を挙げて解説します。

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 前回で軽く触れたが3Dプリンタが街に導入され、その地域固有の素材やリサイクル素材と併用されながら、モノづくりを通じた地域の課題解決や街づくりのためのハブとなる役割を持ち始めている。この背景には、ただモノを作れるだけではなく、地域に存在する多様な素材を受け入れ、地域の人々と「共に作っていく」ためのツールが求められたことが理由の1つに挙げられる。

 3Dプリンタには、多様な素材に対応し、適量の製造が行え、さらには製造したものを再度リサイクル可能であるという特徴がある。これらの特徴を生かした、地域における活用事例については後の連載で詳しく触れることを予定している。今回は3Dプリントを用いたモノづくりを検討する上で考慮すべき、既存の成形方法との違いや企画段階からの考え方などについて、実例を挙げて解説してみる。

製品企画段階から、3Dプリント製法ならではの特殊性を考慮する

 射出成形など他技術での製品化を念頭としたラピッドプロトタイピングや設計補助ツールとしての3Dプリントの活用であれば特段考慮する必要がなかったが、3Dプリントによる最終製品化の検討に際しては、考慮するべきポイントがいくつか存在する。材料や設計上の制約をよく理解した上で、3Dプリントならではのメリットをうまく出せるように検討する必要がある。そこで、3Dプリントの材料押出(MEX)方式、光造形方式、粉末積層方式の特徴や利用する上での注意点を紹介する。

強度の異方性と重量のバランス

 3DプリントのMEX方式は材料を下から順番に積層していくことでモノの形を作る製法である。従来の製法と異なり、積層間では強度が樹脂同士の接着力または融着力に由来し、水平方向と積層方向で強度の異方性が発現する。特に積層方向である高さ方向に対しては射出成形などの部品と比べて強度が低下することが知られており、強度解析でも既存の成形法向けとは異なる手法が求められる。

 強度を上げるために、造形設定により肉厚を増すことはできるが、比例して重量が増加するので、必要な強度と許容可能な重量でバランスを取ることが必要になる。通常は、積層方向への接着力が最弱となるため、材料物性をそのまま適用するのではなく、接着力を考慮した上で設計しなければならない。

積層方向の接着力評価(曲げ試験)
積層方向の接着力評価(曲げ試験)[クリックで拡大]出所:筆者

コストと造形時間のバランス

 光造形方式や粉末積層方式の3Dプリントでは、造形エリア全体に造形データを最適配置し複数個のデータを敷き詰めることで、造形1回あたりの製造個数を最大化する「ネスティング手法」を活用し、部品1つあたりの造形時間の短縮とコストダウンを図れる。

 他方、MEX方式では、1〜数本のノズルから樹脂を線状に吐出しながら造形を行っていくため、複数個を配置しても造形時間の短縮にはつながらずコスト低減効果は得にくい。そのため、造形経路を最短化するための「一筆書き」設計などにより、造形時間低減を行うことが模索されている。

 細やかに造形経路がコントロールされた設計は、既存のCADや一般的な3Dプリンタ用のスライサーソフトでは行えないことも多い。解決策として、「Adobe Illustrator」のプラグインとして、ベクターデータをそのまま造形ツールパスに変換する機能を持つ「Fabrix」など使用しやすいモノをはじめ、現在でも世界中でさまざまなソフトウェアが日々開発されている。ただ形を作るだけではなく、実用的な強度や現実的なコストを実現するためにいくつかの設計上の制約を考慮する必要がある。

MEX方式の3Dプリント設計時の基本指針
MEX方式の3Dプリント設計時の基本指針[クリックで拡大] 出所:慶應義塾大学

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