かわいい顔してプロ並みの強さ、中国発AI囲碁ロボット「SenseRobot GO」の実力は:ロボット開発クローズアップ(3/3 ページ)
2024年2月1日。アマゾンで家庭用AI囲碁ロボット「SenseRobot GO」が発売された。今回、SenseRobot GOの開発担当者に話を伺う機会を得たので、AI囲碁ロボットの詳細をレポートする。
SenseRobot GOは、対局中に「アルゴリズム検出」を加え、碁盤の全体的な状況をリアルタイムで検出し分析している。これには、碁石の落下、遮蔽などの状況も含まれる。この能力に基づいて、対局の速度を最適化しバランスを取っているそうだ。
ロボット側の着手が遅すぎると、対局のリズムに影響を与える。逆に早すぎると、ロボットアームの動きがユーザーに触れる可能性があり、不快な体験と潜在的な安全リスクを引き起こす。崔氏は「ロボットが対局中に着手を行う速度も、人間の思考プロセスを模倣することを考慮しています。着手が速すぎると、人間に圧迫感を与える可能性があるからです」と述べている。
AI囲碁ソフトは「KataGo」がベース
SenseRobot GOの19路盤用AI囲碁ソフトは「KataGo」がベースになっている。KataGoとは、2019年に登場したAI囲碁ソフトで、現在では、「世界で最も強いコンピュータ囲碁ソフトウェアの一つ」といわれている。
SenseRobot GOは、棋力に応じてKataGOを最適化しているそうだ。
AI囲碁ソフトを“自然に弱く”するのが難しかったようで「対局中には、ローカルデバイスの計算能力、棋力レベル、反応速度のバランスを考慮して、KataGOのバージョン選択とパラメータ最適化を行っています」と崔氏は説明する。具体的には、モンテカルロ木探索の探索回数を減らして棋力を調整したりしているそうだ。
ロボットは、現在の対局モデルとそのパラメータに基づき、戦局に基づいて計算された最適解で着手を選ぶ。
また、18級〜九段の棋力は、異なるレベルのプロ棋士に評価を依頼したそうだ。なお、六段まではローカル環境での対局が可能で、七段〜九段はインターネット接続が必要になる。「アマチュアからプロまで、さまざまなレベルのユーザーが自分にふさわしい対局レベルを見つけることができます」という。
ちなみに、9路と13路ではセンスロボットが独自に開発したAI囲碁ソフトが採用されている。
AI囲碁ロボット「SenseRobot GO」の未来
現時点で、SenseRobot GOは囲碁の対局の相手をしてくれるだけだが、今後、AI演習機能やオンライン対局機能を実装する計画があるという。
対局後にSenseRobot GOと検討もできるようになるそうだ。各手が勝率に与える影響を分析し、各手に対する選択点の推奨、良い手と悪い手の評価を行ってくれるというので、楽しみだ。
SenseRobot GOは、ロボットとして、とても完成度が高いと筆者は感じた。
しかしながら、日本の囲碁人口は減りつつある。センスロボットは、AI囲碁ロボットをどのように普及させていく戦略なのだろうか? 率直に質問をぶつけてみた。
同社はSenseRobot GOを通じ、日本の囲碁ファンやプロの棋士に面白くてインタラクティブな囲碁教育と対局体験を提供し、より多くの方が囲碁に興味を持つようにし、それによって日本の囲碁文化の伝承と発展を促進したいと考えているそうだ。「今後、SenseRobot GOカップを開催し、囲碁界の活性化に寄与したい」と具体的なプランも持っている。
2024年2〜4月は「センちゃん全国ツアー」が開催され、各地の碁会所でSenseRobot GOとの対局を体験できる。ツアー先の最新情報については、SenseRobotのX(旧Twitter)アカウント(@SRobot90498)で確認されたい。
コロナ禍により、多くの碁会所が閉所の憂き目にあった。行きつけの碁会所を失った人にとって、SenseRobot GOがあれば自宅でいつでも囲碁対局を楽しむことができる。囲碁愛好家の新たな対局相手になるだけでなく、新機能の追加でオンライン対局なども可能になるなど、囲碁のファン層開拓にも一役買いそうだ。
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