時間を創出し価値を最大化するミスミのデジタルマニュファクチャリング(前編):スマート工場最前線(2/2 ページ)
ミスミグループ本社は「meviy Factory Day」を開き、AI(人工知能)を活用した機械部品調達向けプラットフォーム「meviy」を支える「meviyデジタルマニュファクチュアリングシステム」について紹介した。本稿では前編としてミスミによる調達領域への革新について紹介する。
meviyにより調達の無駄を省いて時間を生み出す
吉田氏は調達現場の実情を“時間の三重苦”と表現する。製造装置1つとっても、たくさんの部品が使われている。それらを調達するためには、それぞれに図面が必要となる。図面を基に各社に見積もりをし、その回答を待ち、さらに発注後には納期が生じる。
「仮に1台に1500点の部品が必要だとすると、これらを調達するために3、4カ月というリードタイムが調達の領域だけでかかっている。日本全体で見れば非常に膨大な時間を浪費していることになる。使える時間が少なくなっていく中で生産性を高めていくためには、無駄を省いていくことが重要になる」(吉田氏)
無駄をなくすことで、減り続けていく時間を新たに創出し、人にしかできない仕事をすることが最大の価値となる。そんな背景から2016年にスタートしたのが、3D CADデータを基にオンラインで見積もりや発注を可能にしたmeviyだ。
吉田氏は「(1977年の)カタログと全く同じコンセプト、発想だ。ユーザー側の革新とモノづくり側の革新、この2つのイノベーションを同時に実現することに非常にこだわって作った仕組みだ」と話す。アップロードした3D CADデータのチェック機能もあるため、教育機関での利用も広がっており、「meviyが先生役になってくれるといわれるゆえん」(吉田氏)となっている。トヨタ自動車 モノづくりエンジニアリング部 技術企画室 主任の森光孝敏氏も「meviyに聞けば、いろいろと指摘してくれる。教育用のツールとしても優れている」とコメントする。
当初は金型部品だけだったが、切削プレートや切削加工、板金加工、旋盤加工、さらには板金溶接へと徐々に領域を拡大、アップロードされたデータは2000万点を超える。さらに日本以外でも既に米国や欧州、中国でサービスを提供、2024年2月にはアジアでも展開する予定だ。
ドイツから来日した外資系EVメーカーのメカ設計者も登壇し、「欧州の工場でもmeviyを活用しており、先日も大型の機械設計に携わったが、そこで使われた部品の90%以上をミスミやmeviyで調達した。エンジニアリングの時間を本当に削減でき、そこで生まれた時間をチームとの話し合いなどに使うことができる」と評した。
吉田氏は「世界の5極でmeviyを展開して、労働生産性の改革に貢献していきたい。われわれが提供しているのは商品ではなく時間だと考えている。われわれが提供する時間を使って、モノづくりに携わる方により創造的な仕事をしていただきたい」と意気込む。
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