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JSRや出光はマテリアルズインフォマティクスのプロ人材をどのように育成したのかマテリアルズインフォマティクス最前線(4)(2/3 ページ)

本連載ではマテリアルズインフォマティクスに関する最新の取り組みを取り上げる。第4回は、国内化学メーカー向けにマテリアルズインフォマティクスのコンサルティング実績を積み重ねてきたEnthoughtを紹介する。

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MIのプロを育てるサービスとは

MONOist Enthoughtが提供しているMIのサービスについて教えてください。

ハイバー氏 当社ではMIのサービスとして主に「クラスルームトレーニング」「アプリ作成のメンターシップ(座学研修)」「アプレンティスシッププログラム」を提供している。クラスルームトレーニングは、R&Dで対応すべきさまざまな課題に取り組むために専用に開発されたトレーニングプログラムを通じて、必要なスキルを研究者向けに教育する。クラスルームトレーニングのプログラムとしては、「Python Foundation」「Data Analysis」「Machine Learning」「MI Sort Course」をラインアップしており、いずれも対象者の所要時間は20時間となっている。

 Python Foundationでは、プログラミング言語のPythonを用いたライブラリーのデータ処理、分析、視覚化で使用する実践的なコーディングと基礎知識を教える。

 Data Analysisでは、一般的なデータ分析のワークフローの概要や考え方だけでなく、Pythonで数値計算を効率的に行うための拡張モジュール「NumPy」、Pythonのデータ解析ライブラリ「Pandas」、Pandasをベースにした多次元配列解析ライブラリ「XArray」を使用した演習を通じて、情報科学やツールの理解を促す。実習を通じて、実際のプロジェクトに適用できるデータ分析ワークブック(問題集)も開発する。

 Machine Learningでは、理工系のデータセットから引き出された問題を用いて、機械学習の基礎やスキルを習得させる。このコースでは主に、教師データありの機械学習や教師データがない場合における機械学習の戦略について教える。

 MI Short Courseでは、機械学習(ML)とAIを用いてMIの問題を解かせる。これにより、ベイズ最適化、分子の特徴付けなどを学べる。

クラスルームトレーニングの概要
クラスルームトレーニングの概要[クリックで拡大] 出所:Enthought

 アプリ作成のメンターシップでは、Enthoughtのテクニカルチームに所属するMIのエキスパートが3週間にわたり対象者に座学研修を行い、MI用アプリの構築を支援する。座学研修ではMIのエキスパートがサポートすることで対象者が主体となって学習できるようにしている。さらに、対象者がMI用アプリ開発の進捗状況と最終成果を所属企業の上層部を報告することで、成果を可視化する。

アプリ作成のメンターシップの概要
アプリ作成のメンターシップの概要[クリックで拡大] 出所:Enthought

 アプレンティスシッププログラムは、6カ月間をかけてMI人材などを育成するプログラムで、当社のメンターが対象者と話し合い、所属する企業の素材開発やそのプロセス、製造工程における課題を洗い出す。次に現在、どのようにその課題を解決するために情報収集や対策を行っているのかをテクニカルチームのメンターが把握する。

 続いて、メンターが対象者のMIやプログラミングのレベルに合わせて座学を行う。座学では、Pythonや情報科学、ソフトウェアエンジニアリングなどを教える。その後、東京都内あるいはオースティンのオフィスで3週間をかけて、対象者がメンターの支援を受けつつ所属企業における素材開発などの課題を解決するための作業(MI用システムのコーディングなど)を行う。

 その3週間が終了後に、対象者が所属する企業で通常業務を行うようになっても当社のメンターシップは2〜3カ月間をかけて実施する。その際には、フルタイムでメンターシップを受けて課題解決のプロジェクトを続けられる人もいれば、他のプロジェクトと掛け持ちで継続する人もいる。最後に対象者が、アプレンティスシッププログラムで取り組んだ作業の進捗や成果を、所属する企業の幹部や関係者にプレゼンテーションする。

MONOist 日本企業は何を学びたくてEnthoughtにコンサルティングを依頼するのでしょうか。

ハイバー氏 日本のメーカーにも情報科学の知識を豊富に持った科学者や化学者がいるが、MIを社内に導入するためにはそのような人材がもっと必要だ。加えて、そのような人材の多くが知っているMIのシステムは適用できる範囲が狭く、社内全体で使えるMIのシステムやツールを作成するためにはもっと知識が求められる。これらの問題を解消するために当社にコンサルティングを依頼する会社が多い。

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