旭化成のDX戦略、MIで従来品の2倍の性能を実現し共創型MIの基盤も構築:マテリアルズインフォマティクス(3/4 ページ)
旭化成は、東京都内とオンラインで説明会を開き、マテリアルズインフォマティクス(MI)の導入やデジタル人材の育成など、DXに関する同社の取り組みを紹介した。
社員のデジタルスキルレベルを可視化するDXオープンバッジ
旭化成は、デジタル基盤の強化に向けて、デジタル人材の育成、生成AI(人工知能)の活用、セキュリティ対策の強化も実施中だ。デジタル人材の育成では、旭化成DXオープンバッジ取得の推進やデジタル活用人材の育成、デジタル共創本部内でのデジタルタレント戦略室の新設などを実施している。
旭化成DXオープンバッジは、1〜5レベルの5段階で対象社員のデジタルスキルを評価するもので、同社では、レベル1〜2をデジタル入門人材、レベル3をデジタル活用人材、レベル4〜5をデジタルプロフェッショナル人材と定義した。
旭化成DXオープンバッジのレベルを上げるために、社員がデジタルスキルの向上が図れるように、同社では、機能別組織主催のDX勉強会を開催している他、DX人材育成プログラムとして、IT入門や生成AI入門、AI入門、Pythonコード、MI入門などの講義も開いている。これらの講義では、技術動向に応じてタイムリーに教材を変えているため時代に合った教育を受けられる。
デジタル共創本部内に新設されたデジタルタレント戦略室では、これまで個別にアジャイル開発してきた人材育成方法や共創プログラムを体系化し、人材施策を総合的に加速する。さらに、人材の多様性確保を目的にデジタル共創本部内のキャリア社員率を40%とし、インドやベトナムの大学での採用活動も展開。2024年度からはデジタル共創本部内に退職者との共創の機会を作るアムネイルネットワークも創設する。
生成AIで書面監査時間を年間で1820時間短縮
生成AIの活用では、独自ガイドラインの設定とコミュニティーの発足により、旭化成グループ全体での積極的な活用を促進している他、専任組織「生成AI/言語解析ユニット」も発足し、同ユニット主導で生成AI活用の風土を醸成して、システムの実装や人材育成を加速している。
具体的には、2023年6月に生成AI導入のフェーズ1として、外部に情報が漏れない安全な環境下でWeb上の公開情報を基に生成AIを業務利用できる体制を構築。同年8月に開始したフェーズ2では、Web上の最新情報と社内データを生成AIで連携できるようにするとともに、ファインチューニングにより自社に特化した回答をするようにアレンジすることで、特許作成など専門性の高い業務に応じられるようにした。
なお、技術調査やプログラミング支援、アンケート分析、特許制作支援、書面監査支援など、効果が大きく、成果見込みが早いテーマから優先的に生成AIを適用しているという。
生成AIの活用事例に関して一例を挙げると生成AI活用を用いた書面監査の効率化がある。同社の調べによれば、現状は顧客の書面監査は1件当たり約25時間かかっているが、今後は、システムおよびファイルの記入や1次回答調査、内容検討、2次レビューに生成AIを適用することで、書面監査1件当たりの時間が約12時間に抑えられることが分かっている。これにより、年間140件の書面監査を行う部門では1年間当たり1820時間の短縮が図れる見込みだ。
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