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旭化成のDX戦略、MIで従来品の2倍の性能を実現し共創型MIの基盤も構築マテリアルズインフォマティクス(2/4 ページ)

旭化成は、東京都内とオンラインで説明会を開き、マテリアルズインフォマティクス(MI)の導入やデジタル人材の育成など、DXに関する同社の取り組みを紹介した。

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MIでろ過量が2倍以上のウイルス除去フィルターを開発

 会見では、経営の高度化とビジネス改革の具体例を、研究/開発、生産/製造/品質、営業/マーケティングのDXとして紹介した。

 研究/開発のDXではマテリアルズインフォマティクス(MI)の導入や共創型MIによりサプライチェーンと共同で開発が行える基盤を構築した。なお、同社ではMIとは材料開発に情報技術を活用し開発期間の短縮や革新的な製品を実現する技術だと定義している。

 MIを活用することで、同社はウイルス除去フィルター「プラノバ」の高性能化を実現した。具体的には、20を超えるプロセス条件に対し500を超えるパターンで実験を繰り返し蓄積したデータとMIを組み合わせて、実験だけでは見つけられなかった製造プロセス条件の組み合わせたを発見。これにより、従来品と比べろ過量が2倍以上の「プラノバS20N」を完成させた。


ウイルス除去フィルター「プラノバ」の高性能化の概要[クリックで拡大] 出所:旭化成

 共創型MIによりサプライチェーンと共同で開発が行える基盤は、秘密計算を活用することで、旭化成と協力企業が互いのデータを秘匿したままデータを分析でき、採用までの期間を短縮する。これにより、企業間の壁を越えたデータ連携を実現し開発期間を短縮して、個社では成し遂げられない革新的な製品開発につなげる見通しだ。既に顧客との協業に向けた取り組みを進めており、蓄エネルギー事業の研究開発で活用を開始している。


共創型MIによりサプライチェーンと共同で開発が行える基盤[クリックで拡大] 出所:旭化成

各拠点の情報をスマートファクトリーで一元管理

 生産/製造/品質のDXでは、スマートファクトリー成熟度診断の導入や電子材料事業の品質競争力強化を進めている。2021年から導入が進められているスマートファクトリー成熟度診断は、工場における今後の取り組みを工場責任者や事業責任者と協議する改善ツールとして使える他、客観的な指標による評価や他工場の好事例も展開でき、工場のスマート化を後押しする。


スマートファクトリー成熟度診断のイメージ[クリックで拡大] 出所:旭化成

 電子材料事業の品質競争力強化では、グローバルにおける各拠点の製品情報や品質管理情報、顧客の問い合わせを一元管理できるスマートファクトリーを構築し、製品仕様範囲内でも顧客製造に影響がある微妙な製品品質のばらつきに迅速に応じられるようにしている。このスマートファクトリーでは、製品各工程のプロセス情報と品質変動をデータで把握可能だ。このデータを分析し工程管理に生かせば工場で生じるトラブルを未然に防げる。

 これらの取り組みにより、改善箇所の特定、データ収集、調査から回答までの時間を従来の4週間から7時間に短縮し、問題解決力をアップした。


電子材料事業の品質競争力強化の概要[クリックで拡大] 出所:旭化成

 営業/マーケティングのDXでは、旭化成ファーマのMR(医療情報担当者)の営業手法改革など、デジタルマーケティングの成功事例や知見を他領域に展開した。これにより、電子部品事業では案件創出数が従来の2倍に増えた。


医療事業で先行するマーケティングDXをマテリアル事業に展開[クリックで拡大] 出所:旭化成

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