ひとが感じる快適さをモデリングする 〜ひとを熱的視点で捉える〜:1Dモデリングの勘所(26)(4/4 ページ)
「1Dモデリング」に関する連載。連載第26回は、“ひとが感じる快適さ”について考えるとともに、その一つの具体例として“ひとを熱的視点で捉える”モデリングについて説明し、定式化して、解析および検証を行う。
快適性の検証
前項の解析を実行した結果をいくつか紹介し、本稿で示した快適性のモデリングの検証を行う。
- 活動指標Met=1.0
- 服装指標Clo=1.2
- 温度ta=25℃
- 風速v=1.2m/s2
- 湿度RH=50%
を標準値として、これらを単独に値を変化させたときの結果を図5〜8に示す。
図5は活動指標(Met)を変化させた場合の快適指標(PMV)の結果である。安静にしている状態から活動が活発になると、最初急激に快適指標の値が上昇し、最適値の0を超えて+方向に上昇していく。
図6は服装指標(Clo)を変化させた場合の快適指標(PMV)の結果である。服を着ていない状態(Clo=0)では、相当寒く感じていることが分かる。服装指標の上昇とともに、快適指標は上昇。最適値の0を超えて暖かいと感じる状態まで移行している。
図7は室内温度(ta)を変化させた場合の快適指標(PMV)の結果である。室内温度の上昇とともに、寒い→涼しい→快適→暖かい→暑いと快適指標が変化している。
図8は風速(v)を変化させた場合の快適指標(PMV)の結果である。快適指標が減少し、少し暖かい状態からちょうどいい状態に移行している。
以上の結果は、日常経験する快適性を定性的に反映している(この種の評価は定量的にその妥当性を判断するのは難しい)。一方、図は示していないが、湿度(RH)を変化(上昇)させた場合、快適指標(PMV)も上昇したが、その度合いは予想したものより小さかった。通常、温度と湿度から不快指数という指標を用いるが、本稿で示した評価法にはこれが含まれないか、不快指数なるものは物理的に決まるものではなく、ひとの感覚を基準にしているかのどちらかだと考える。本稿の快適性の評価法はあくまでも物理的に定義した方法であり、最初に述べたように感覚的、心理的要因は考慮されていない。
次回は、今回の快適性のモデリングの結果を受けて、逆に、快適性に関する機器をさまざまな側面で検討し、何らかのアイデアを考え、その効果をモデリングで検証する。 (次回へ続く)
筆者プロフィール:
大富浩一(https://1dcae.jp/profile/)
日本機械学会 設計研究会
本研究会では、“ものづくりをもっと良いものへ”を目指して、種々の活動を行っている。1Dモデリングはその活動の一つである。
- 研究会HP:https://1dcae.jp/
- 代表者アドレス:ohtomi@1dcae.jp
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