「使えるデータ」で変化に強く、スマート工場の展示施設が東京にオープン:製造マネジメントニュース
デロイト トーマツ グループはロボットやデジタル技術による生産現場の自動化を体験できる施設「The Smart Factory by Delloitte @ Tokyo」(東京都千代田区)を開設した。
デロイト トーマツ グループは2023年12月5日、ロボットやデジタル技術による生産現場の自動化を体験できる施設「The Smart Factory by Delloitte @ Tokyo」(東京都千代田区)を開設した。同社が提唱する「スマートファクトリー2.0」のアイデアに基づくソリューションを展示する内容となっている。
「FOA」の考えに基づくソリューションを展示
「The Smart Factory by Delloitte」はデロイト トーマツ グループの知見を生かした製造業関係者向けの展示施設だ。米国やドイツ、カナダの他、日本国内では京都府に設置しており、今回の東京拠点で5カ所目となる。他の拠点よりも、生産現場でのデータ活用の方法などにスポットを当てた内容となっている。
施設の内部は「Feel Nextエリア」「ロボット生産デモライン」「ワークショップエリア」の3つに分かれている。
「Feel Nextエリア」では、施設のコンセプトであるスマートファクトリー2.0の内容を動画などで説明する。データを基にして現場状況を可視化し、組織の迅速な意思決定につなげるデータ活用の在り方を提案する。デジタル化やデータ活用を業務効率化だけではなく、外部環境への変化に柔軟に対応する組織活動の在り方を紹介する。
「ロボット生産デモライン」は産業用ロボットなどで構築した、多品種生産に対応した生産ラインのデモ環境を見学できる。生産ラインは5つの工程で3種6品目を製造する設定で構築している。生産ラインは収集したデータを使いやすい形に直す「FAO(Flow Oriented Approach)」という考え方に基づくIoT(モノのインターネット)パッケージ製品「FOA Agile」を活用して構築しており、ディスプレイ上に表示される生産機器の稼働状況や生産実績やトラブルの有無といった情報をリアルタイムで確認できる。同製品は4M(huMan:人、Machine:設備、Material:材料、Method:方法)情報に設計/製造情報を統合して、意思決定の基盤となる現場データを作成できる点が特徴だ。
「ワークショップエリア」ではデータ分析の運用方法や組織の意思決定について、デロイト トーマツ グループの専門家などを交えながら議論するためのスペースを提供する。各社の課題点に応じて、データ活用の方法などを提案する。
この他にも開設当日の見学会では、生成AIやヘッドマウントディスプレイ(HMD)を活用した現場作業の支援ソリューションなどをデモ展示した。
デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員の鈴木淳氏は、「これまで国内製造業は、データを集めて工場の稼働状況は分かるようになっても、生産の最適化にまで踏み込んだ改革にまでは至らなかった。取りあえずデータ収集のシステムを入れよう、という発想があったのではないか」と指摘する。こうした課題意識の下、デロイト トーマツ グループはFAOの考えに基づき、IoTセンサーなどで収集した情報に適切な意味づけを行うソリューションを「ロボット生産デモライン」などの展示を通じて紹介する。将来的なAI(人工知能)導入なども視野に入れて、集めたデータを「誰にとっても使いやすい形のデータ」(鈴木氏)を作ることの重要性を訴える。
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