チップレットなど先端半導体やEV部品を3Dで高速自動検査、オムロンが検査装置拡充:FAニュース(2/2 ページ)
オムロンは新たなCT型X線自動検査装置「VT-X950」「VT-X850」を2024年に投入する。半導体検査向けの「VT-X950」は2024年春、EV部品向けの「VT-X850」は2024年2月の発売を予定している。
半導体の地産地消化や異種混載で検査ニーズが高まる?
「VT-X950」は中間工程を視野に入れてコンベヤーなどの自動搬送機能を追加した他、半導体製造装置向けの通信プロトコルであるSECS/GEMに対応。検査データを生産設備へリアルタイムにフィードバックできる。その他、クリーンルームの規格であるISO 14644-1の清浄度クラス6に対応。需要変動に伴う急な生産品目の変更に対する検査設定の自動変更機能も実装している。
近年は経済安全保障リスクに対応するため地産地消の動きも出てきている。「地産地消が進むと、1カ所でいろいろな種類のパッケージを作らなければならなくなる。そうなれば、段取りが多くなる。段取りが多くなるほど品質変化の要因が生まれるため、検査装置が重要になってくるだろう」(村上氏)。
チップレットで異種のチップの混載が進むと、1社ではなく複数社のチップで1つのパッケージにするケースも増えてくる。村上氏「検査ニーズはより高まってくるのでは」と見る。
高出力のX線源搭載でモジュール化するEV部品に対応
EV関連部品向けに特化した「VT-X850」はバッテリー充電時に使用する車載充電器(OBC)や電動システムのe-Axle、電力変換に用いるIGBTモジュールなど、サイズの異なる対象に応じて上下のクリアランスが異なる3タイプを用意した。
IGBTモジュールははんだの接地面積が性能に比例するため、ボイドを除いたはんだの正しい設置面積の計測が求められている。ただ、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)など次世代パワー半導体の採用で電力変換モジュールをより高温で動作させられるようになる一方で、基板の放熱用の銅ブロックの厚みが増し、アルミの放熱フィンが付くなどX線を透過しにくくなっている。
OBCやe-Axleでは主にモジュールとモジュールの接合部分のはんだの充填(じゅうてん)具合を検査する。この接合部分には伝送経路としての役割だけでなく、ユニット同士をつなぐ接合材として長期間走行しても壊れない強度が求められる。ただ、部品のモジュール化が進む中で、内部構造が複雑化して透過すべき対象物が増加している。
「VT-X850」はX線源の出力を最大160kVにしたことで、従来よりも短時間で安定した画像が得られるようになった。ワークの重量も最大40kgまで対応する。
「VT-X750」は5Gの基地局や生成AI(人工知能)、データセンター向けなどの基板サイズが大型化する動きを受けて、最大基板サイズが1200×660mmのXLサイズを新たに投入する。
新機種ではAIを活用した検査設定の自動化も実現した。撮像画像をディープラーニングによって処理し、良品/不良品判断のインライン検査を行う。AIが画像判断を行う際のパラメータ設定を自動化する他、各製品のはんだ付け状態などを、生成した3Dモデルから自動的に判断する。
「これまでは画像処理を使ってはんだの面積などを計測しており、画像処理のスキルがあることが設定の前提だった。今回はAIを活用して、それらの設定のいくつかを自動化した」(村上氏)。「VT-X950」「VT-X850」は標準、「VT-X750」でもバージョンアップとして搭載していく。
オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 検査システム事業本部 本部長の渋谷和久氏は「あらゆる産業で高度なモノづくりが進んでいくと、その品質の確保も同時に求められてくる。これまで検査システム事業はプリント基板の用途の拡大に伴って拡大してきたが、これからはプリント基板に限らず、先端半導体をはじめとする高度なテクノロジーを安心、安全に使っていただけるように、われわれのX検査装置を通して貢献していきたい」と意気込む。
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