ITSで自転車が車車間通信、出会い頭事故回避や運転者間コミュニケーションを実現:ジャパンモビリティショー2023
パナソニックグループは、「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」において、ITS対応端末を搭載した自転車により、自動車との車車間通信を行い、出会い頭事故を防いだり、運転者間でコミュニケーションを行ったりするデモを紹介した。
パナソニックグループは、「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー、旧東京モーターショー)」(プレスデー:2023年10月25日〜26日、一般公開日:10月28日〜11月5日、東京ビッグサイト)において、ITS(高度交通情報システム)対応端末を搭載した自転車により、自動車との車車間通信を行い、出会い頭事故を防いだり、運転者間でコミュニケーションを行ったりするデモを紹介した。
ITSは、最先端の情報通信技術を用いて人と道路と車両とで情報をやりとりすることで、交通事故や渋滞などの道路交通問題の解決を目指した交通システムだ。1996年にITS推進に関する全体構想が策定され、2014年からはETC2.0サービスとして組み込まれ、自動車においては徐々に対応端末の搭載が広がりつつある。
ただ、自動車だけが情報の受発信を行えるだけでは、交通事故抑制には限界がある。こうした状況を受けて、パナソニックグループのパナソニック サイクルテックとパナソニック システムネットワークス開発研究所は2023年3月に、京セラ、トヨタ自動車、豊田通商と協力し、ITS対応の無線装置を使用した電動アシスト自転車と自動車による車車間通信で交通事故回避のための検証を行った。
今回のJAPAN MOBILITY SHOW 2023での出展内容はこうした検証内容を反映したものとなっている。電動アシスト自転車にITS端末とそれを接続した表示デバイスを搭載し、デモでは運転シミュレーターで電動アシスト自転車を運転しながら、見通しの悪い交差点から飛び出してくる自動車に対し、車車間通信によるアラートを発報する。そのアラートのある場合とない場合の違いを体験するという形だ。また、車車間通信の特性を生かし「お先にどうぞ」などの譲り合いや、それに対するお礼など運転者間のコミュニケーションにも活用できることも紹介した。
ITS通信には760MHz帯の専用周波数が使われており干渉などが発生しないため、安定した通信が行える。「ITSそのものの関連技術や企業間連携などは、ITS Connect推進協議会なども含めて進められており、技術的には既に使用できるレベルに達している。後はアラートの出し方やタイミングなど運転者への最適な伝え方を実証を通じて高めていく」(説明員)。
また、自転車に搭載することを考えるとコスト面の問題もありそうだが「ITS端末そのもののコスト低減も進んでいる。電動アシスト自転車の価格帯が13万円〜18万円くらいであることを考えると、ITS端末を搭載しても吸収できるレベルとなっている」(説明員)。
ただ、実際にこうした技術が普及するまではまだしばらく時間がかかりそうだ。課題は利用してメリットがある環境をどう作るかという点だ。「自動車も自転車も全てがITS端末を搭載していればさまざまな価値を生み出すことができる。しかし、搭載車両が少なければ、車車間での出会い頭事故を防ぐことも難しく、普及の最初のきっかけづくりが難しい。自動車に標準搭載されるようになり、それが普及した後にようやく自転車でも広がるという流れとなるだろう」(説明員)と難しさを示していた。
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