ランボルギーニの生産数は20年間で大幅増、支えるのはPTCのデジタル基盤:製造IT導入事例
PTC ジャパンは2023年10月26日、オンラインイベントを開催した。ランボルギーニ VP Motorsport Lamborghiniを務めるマウリツィオ・レッジャーニ氏の講演内容を取り上げて紹介する。
PTC ジャパンは2023年10月26日、オンラインイベント「PLMからEnterprise DXプラットフォームへ」を開催した。アウトモビリ・ランボルギーニ(以下、ランボルギーニ)やシーゲイト・テクノロジーなどが登壇し、自社におけるPLMを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の取り組みを解説した。ここではランボルギーニ VP Motorsport Lamborghiniを務めるマウリツィオ・レッジャーニ(Maurizio Reggiani)氏の講演内容を取り上げて紹介する。
アウディによる買収から始まった変革
初めにレッジャーニ氏は、「ミウラ(Miura)」や「エスパーダ(Espada)」「カウンタック(Countach)」「LM002」などランボルギーニが開発してきた歴代モデルを紹介し、アウディによる買収までの歴史を振り返った。特に、ランボルギーニが「より複雑で工業的な生産アプローチ」(レッジャーニ氏)を取る転機になったのが、このアウディによる買収だったようだ。買収後の2001年までは、ランボルギーニによる新車の年間生産台数が数百台といった数量にとどまっていたという。
もう1つ、買収後の大きな変化として、ランボルギーニによる新車の年間生産台数が増加した点が挙げられる。以前は1度に開発するのは1モデルだったが、2005年ごろから並行して2モデル以上の開発が進み、生産台数も増加した。ただし、そのためには各モデルの設計を同時並行で進める必要があり、社内のデータ連携とともに、高度な開発プロセスを安定的に進められるシステムが求められる。このためにランボルギーニはPTCの製品を段階的に取り入れ、1999年にCADソリューション「Creo」、2008年にPLMパッケージ「Windchill」を導入した。
さらに、2018年の「ウルス(Urus)」投入以降は1日当たりの生産台数がさらに増えたため、生産ラインや設備の状況を確認し、生産の柔軟性を高めるための取り組みが必要になった。このため、2020年に仮想環境での事前検証などを行える産業用AR(拡張現実)ソリューション「Vuforia」を取り入れた。2021年には同社製品の電動化戦略「コル・タウリ戦略」に基づき、今後、テスト要件が増大するであろうことを見越して、開発段階のアクティビティー全体の管理を行うために「Windchill RV&S」も導入している。
ランボルギーニの新車生産台数は、リーマンショック後に一時的に落ち込んだが、2023年には1万台を超える見通しだという。レッジャーニ氏は導入当時の状況を振り返り、「それまでのソフトウェアの投資と比較するとかなり高額だった」としつつ、「導入を決定したことで当社の独自性が生まれ、今のランボルギーニの新型車開発につながったと考えている」と説明した。また、PTCによる導入支援やカスタマイズ対応も重要な評価点だと語った。
PTCの製品、ソリューションを選択した理由としては、アウディやフォルクスワーゲングループとのデータ連携を特に重視したためだと説明した。設計データだけではなく、シミュレーションのデータの一元化なども含めて検討した時に、PTCのソリューションが最適だと判断したという。
レッジャーニ氏は「従来のエンジン車からHEV(ハイブリッド車)、EV(電動自動車)へ移行する、極めて大きな変化が起こっている。ランボルギーニのようなブランドはクルマのDNAという考え方が非常に重要だ。新世代のクルマでもこれまで通りのエモーショナルな車を提供しなければならない。こうしたパラダイムシフトの中で生き残るには、PTCのような最適なパートナーとともに進んでいくことが重要なのだ」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 設計領域がカギを握る! 海外事例で学ぶサステナブルな製品開発アプローチ
PTCジャパンはWebセミナー「設計から始まるサステナビリティ 〜世界に学べ! 3D CADの最新事例〜」を開催し、設計開発領域におけるサステナビリティの取り組みや具体的なアプローチについて、海外の最新事例を交えて説明した。 - SaaS対応の3D CAD「Creo+」はオンプレ版「Creo」と何が違ってどこが良い?
PTCジャパンは、2023年5月に発表したSaaS対応の3D CADソリューション「Creo+」に関するメディア向け技術説明会を開催した。 - PTCが2023年CADを取り巻く5つのトレンドを発表、5月にはSaaS版「Creo」も
PTCジャパンは「2023年のCADトレンド」に関する記者説明会を開催し、製品開発における5つのトレンドと、それらを踏まえたPTCのソリューションなどについて紹介した。 - PTCジャパン、オリンパスの国内工場でThingWorxの導入実証を開始
PTCジャパンは、同社のIoTアプリケーション開発プラットフォーム「ThingWorx」などを活用した導入実証を、オリンパスの国内工場で展開する。 - カイゼン効果をすぐ可視化、OEEの継続的モニタリングを実現するPTCの「DPM」
PTCジャパンは2022年6月14日、工場の総合設備効率(OEE)改善に貢献する「ThingWorx Digital Performance Management(DPM)」を日本市場で販売開始すると発表した。ボトルネックの発見と共に、改善活動をクローズドループで反復し、効果を継続的にモニタリングできる。