ついにベールを脱いだキヤノンロボットセル、カメラとトルクセンサーで高度制御:Canon EXPO 2023
キヤノンおよびキヤノンマーケティングジャパンは新製品や技術紹介を行うプライベートイベント「Canon EXPO 2023」において、キヤノン製の多関節ロボットを使った組み立て技術の紹介をした。
キヤノンおよびキヤノンマーケティングジャパンは新製品や技術紹介を行うプライベートイベント「Canon EXPO 2023」(基調講演:2023年10月17日/東京国際フォーラム、展示会:同月18〜20日/パシフィコ横浜ノース)において、キヤノン製の多関節ロボットを使った組み立て技術の紹介をした。
今回は「キヤノンロボットセル(以下、ロボットセル)」として、キヤノンが内製した可搬重量7kgの6軸多関節ロボットが、手元に付けられたカメラを眼としてさまざまな作業を担う様子を初公開した。現状はキヤノンの社内設備用であり、販売の予定はないという。
ロボットの各軸には1g程度の微小な力を検出できるトルクセンサーが搭載されており、カメラからの情報と合わせて高度な制御が可能になっている。既に試作機を社内工場で使い始めており、複合機に使われるユニット製品の組み立てに活用しているという。
レゴブロックを組み立てるデモンストレーションでは、種類ごとにトレーにばら積みされたブロックをピッキングしながら9種類のモチーフを作成した。
組み立てるモチーフのCADモデルを事前に読み込むことで、どのような順番でレゴブロックを組めばいいのか、その際にどのようにピッキングすればいいのかなどをコンピュータが自動で計算する。また、上部から4つのカメラでトレー上のブロックを見ることで、AI(人工知能)を活用して必要なブロックがどこにあるのかを認識。組み付けるために姿勢の転換が必要な場合は、自動で判断してブロックを治具の上に置いてつかみ直すことで姿勢変更を行う。
AIの学習も仮想空間上で行う。各ブロックのデータを取り込み、複数個のブロックがトレーに落ちてくるシミュレーションをランダムに繰り返してAIに学習させることで、必要なブロックの中でどれが一番取りやすいかを判断できるようになる。仮想空間と現実空間では最大で5cm程度の誤差が発生するが、ロボットセルはその誤差を検出して自動補正できる。
「われわれの工場でもロボットのために部品を並べていたが、その分手間が掛かってしまう。そのため、ばらばらの状態で供給してもロボットが取れるようにする取り組みが進んでいる」(キヤノンの説明員)。
内製のモニタリングシステムによってロボットの電流値などを常時監視しており、予兆保全によって適切なタイミングでのメンテナンスが可能になる。協働ロボットとして安全柵なしでも人の隣で作業できるよう、安全認証の取得に向けた開発も進めている。
会場では、台車で移動できるようにしたロボットセルによるカバーやピン、フレキケーブルなどの組み付けデモンストレーションも行った。台車を移動した際には、ロボットは作業する架台の4隅にある穴の中にある位置調整用のマークを手元のカメラで認識することでX、Y軸を、マークの隣にあるくぼみをハンドでタッチすることでZ軸の位置合わせを行う。
高度な制御機能のアピールとして行ったゴルフボールの積み上げデモンストレーションも来場者の注目を集めた。
ゴルフボールには空気抵抗を抑えて飛距離を伸ばすためにディンプルといわれるくぼみが付いている。台の上でロボットがゴルフボールを転がし、安定しやすい大きめのディンプルが真下になり、なおかつゴルフボールがハンドの真ん中に来るように位置調整を行い、それぞれのボールの上に載せていく。取材時点では、最高で6個まで重ねることができていた。
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