ミラーレスカメラをモノづくり現場で活用、キヤノンが提案する映像DX:Canon EXPO 2023
キヤノンおよびキヤノンマーケティングジャパンは新製品や技術紹介を行うプライベートイベント「Canon EXPO 2023」において、キヤノンのカメラ「EOS」やネットワークカメラを生産現場で用いた映像DX(デジタルトランスフォーメーション)を紹介した。
キヤノンおよびキヤノンマーケティングジャパンは新製品や技術紹介を行うプライベートイベント「Canon EXPO 2023」(基調講演:2023年10月17日/東京国際フォーラム、展示会:同月18〜20日/パシフィコ横浜ノース)において、キヤノンのカメラ「EOS」やネットワークカメラを生産現場で用いた映像DX(デジタルトランスフォーメーション)などを紹介した。
ネットワークカメラが映像IoT機器に早変わり
生産現場では入庫や検品、製造、検査、出庫などの各工程において作業者による目視検査などが行われている。だが、深刻化する人手不足で現場の作業者はより付加価値の高い作業への転換が求められている。
そこでキヤノンが提案するのが、カメラと画像解析ソフトを用いてそれら作業者が行っていた検査作業を自動化するだけでなく、記録映像からデータを可視化することでトレーサビリティーにまで活用する映像DXだ。
「コンシュマー向けのカメラ、セキュリティ向けのネットワークカメラを活用してモノづくりの映像DXを支援しようというのが事業の始まりになっている。もともとキヤノンの複合機を導入する際に、“映像を活用して工場でこんなことできないか”という引き合いはあった。キヤノンの工場でのノウハウを知るエンジニアが映像コンサルタントとして同行することで、工程改善を含めたソリューション提案ができるようになった」(同説明員)
例えば、会場で使用していたミラーレスカメラ「EOS R5」は約4500万画素で、高精細の接写により目視の能力を超えた検査を実現する。大量に並んだバーコードの一括読み取りなども可能だ。自動車のETCのように、段ボール箱を積んだパレットがカメラの前を通過するだけで、段ボール箱に貼られた100個のバーコードを一気に検品し、誤混入も検出できる。ハンディコードリーダーで一個一個読み取るよりはるかに時間が短く、箱の傷やへこみも写真で記録に残せる。内蔵のWi-Fiは5GHzで高速かつ安定的な通信が可能だ。
「プロ向けのカメラ、レンズを使って撮影した画像より、安くていいものは世の中に恐らくない。他社の工業用カメラでも撮ることができるが、キヤノンはコンシュマー向け製品ならではの価格で高機能のカメラを提供できる。製造現場での使用となるとこれまで耐久性に懸念があったが、ミラーレスになりシャッターなどの駆動部がなくなったことで工場の中でも安心して使えるようになってきた」(キヤノンの説明員)
ネットワークカメラの俯瞰撮像と首振り動作を活用した制御盤の数値の読み取りデモンストレーションも披露した他、大型製品の検査の自動化も提案した。
「ネットワークカメラで倉庫のセキュリティを担保しつつ在庫を管理したり、メーターの数値を読みつつ異常発生時に即座に通知をしたりできるようになる。大型製品の検査の際には、作業者が高所に上らなくて済むようになる。1台のネットワークカメラが映像IoT(モノのインターネット)デバイスに早変わりする」(同説明員)
これらの機能を簡単に実現できるのが画像処理ソフトウェア「Vision Edition」だ。マッチングやエッジ検出、バーコードやQRコードの読み取りなどさまざまな機能を使ったプログラムをノーコードで設定できる。
最近はセキュリティのためではなく、モノづくりの過程を記録するために工場にネットワークカメラを導入する事例も増えているという。そこで会場では、AI(人工知能)を活用して作業者の動きを解析し、決められた手順通りに作業を行っているかチェックする技術なども紹介した。事前に見るべき箇所を設定しておけば自動でフォーカスを合わせることができ、1台で複数箇所の検査も可能だ。
「例えばふたを閉めたり、ねじを締めたりするのにどれくらい時間がかかったかが分かる。また、グリスを内部に塗ったり、外観を拭いたりしかどうかは後から見ても分からないが、所定の作業を飛ばすと警告も出すことができる。まるでベテランの検査員が見張っているかのように作業でき、それらの工程を映像として残しておくことができる」(同説明員)
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