血液検査で複数のがんを早期に検知するがんマーカーを発見:医療技術ニュース
名古屋大学は、複数のがんを早期に検知する可能性を持った血液がんマーカー「SDF-4」を発見した。診断能の精度は、現在日常診療で汎用されている血液がんマーカーよりも高い。
名古屋大学は2023年9月28日、胃がんや食道がんなど複数のがんを早期に検知する可能性を持った血液がんマーカー「stromal cell-derived factor 4 (SDF-4)」を発見したと発表した。診断能の精度は、現在日常診療で汎用されている血液がんマーカーよりも高い。
最近の研究成果やデータベースを用いて、がん細胞から分泌され血液がんマーカーとして大規模検診にも利用できる可能性のある物質を探索したところ、タンパク質SDF-4が候補に上がった。
胃がん、乳がん、大腸がん、膵臓がん、食道がん、膵臓がんの患者における血液中のSDF-4濃度は、いずれも健常者に比べて高かった。また、胃がん患者のSDF-4濃度は、早期の段階から進行がんと同様に濃度が高かった。胃がんにおけるSDF-4の感度は89%、特異度は99%と非常に高く、血液がんマーカーとして有用である可能性が示唆された。現在、診療で用いられている血液がんマーカーの感度は、CEAが13%、CA19-9が17%だ。
9種類の胃がん細胞を用いた実験では、がん細胞をすりつぶした溶解液中にもSDF-4が存在し、培養液中のSDF-4濃度は継時的に上昇した。これらの結果から、がん細胞自体がSDF-4を分泌し、がん細胞の崩壊によっても血中濃度が上昇する可能性が示唆された。
手術によって摘出された胃がん組織を用いた免疫組織学的染色では、いずれのステージでも腫瘍組織内で均一な分布で染色された。一方、正常組織では染色されず、SDF-4は存在しないことが明らかとなった。陽性率はいずれのステージでもほぼ同様で、がんの早期の段階からSDF-4はがん組織内に含まれることが示された。
同大学は今後、より多くの患者でSDF-4の診断精度を評価するために国際共同研究を計画している。また、血液検体を用いてSDF-4濃度を測定する検査キットの開発にも着手した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 青魚に含まれるEPA代謝物が花粉のアレルギー症状を抑えることを発見
東京大学は、マウスを使った実験で、ω-3脂肪酸EPAの代謝物5,6-DiHETEが、花粉によるアレルギー性結膜炎の症状を抑制することを発見した。青魚に多く含まれる代謝物のため、食事によるアレルギー性結膜炎の治療効果も期待される。 - 拠点を5倍に拡大、医療機器の修理や点検業務の受託サービスを強化
OKIクロステックは、医療機器の修理や点検業務の受託サービス体制を強化した。修理、点検ができる拠点を46拠点に拡大し、医療機器修理責任技術者を20人増員して300人体制とした。 - 通信機能付きの上腕式血圧計を発売、アプリで簡単にデータを管理
オムロン ヘルスケアは、筒状のカフに腕を入れるだけで血圧を測定できる「オムロン 上腕式血圧計 HCR-1901T2」を発売した。通信機能を備え、測定データをアプリに転送して値の変化を表やグラフで確認できる。 - 食品用ラップのように脳表面に密着できる薄膜電極を開発
東京工業大学は、脳表での電位記録と電気刺激の両立が可能な厚さ約8μmの薄膜硬膜下電極を開発した。複雑な曲面を持つ生体組織表面にも食品用ラップのように密着することが可能だ。 - 解読困難だったヒトゲノムの「暗黒領域」を読み解く
東京大学は、日本人健常者270人のゲノムデータを分析し、ヒトゲノムの中で暗黒領域と呼ばれる領域の1つである縦列反復配列の組成を明らかにした。 - 到着先でカートを自動で切り離せる病院用置き配型搬送ロボットを発売
パナソニック プロダクションエンジニアリングは、病院内で薬剤や検体を自動搬送し、カートを到着場所で切り離す仕組みを備えた、置き配型搬送ロボット「HOSPI Trail」を発売する。