技術者なしのマーケティングはあり得ない! 巻き込みに必要な考え方:間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(8)(3/3 ページ)
コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。
技術者をマーケティングに巻き込む方法
技術者のマーケティングへの参加はその成功にとって欠かせない要素であることは明らかである。しかし前述の通り、技術者がマーケティング活動に消極的だという現実も存在する。
この節では、技術者をマーケティングの過程にどのように巻き込んでいくか、その方法について詳しく説明する。
(1)組織文化の再構築
最もシンプルな方法は、技術者の仕事内容をマーケティングまで含めたところまで拡張することである。しかし、「マーケティングは自分の主要な業務ではなく、営業をサポートするだけ」と考える技術者も少なくない。このような考えを持つ技術者にマーケティングへの参加を求めても、積極的なフィードバックを期待するのは難しい。
そのため、技術者がマーケティング活動に自然に参加する組織文化を築くことが求められる。「マーケティングも技術者の重要な業務の一部」と見なすような文化である。
しかしながら、このような組織文化の変革は容易ではない。技術者の製品開発や技術向上にかける時間が短縮されることは、企業の競争力に影響を及ぼすリスクがある。このような大きな変更は、部門のリーダーや上層部の単独の判断で進めることは難しい。理想的には、技術者がマーケティング活動に自然に参加する組織文化を築くことが望ましいが、実現は難しい。そのため、次節ではより実践的なアプローチについて紹介する。
(2)営業から積極的に質問を投げかける
営業部門が技術者に対して積極的にアプローチし、質問や意見を求めることは非常に効果的である。新しい製品の特長や技術的な詳細についての質問、顧客からのフィードバックや要望に対する技術的な対応の相談など、具体的なコミュニケーションを通じて技術者の知識や意見を引き出せる。
技術者は自らの専門知識や経験の共有を求められることが少ないため、話しかけられると質問に丁寧に答えてくれることが多い。このようなコミュニケーションの取り組みは、両部門間の関係を強化するだけでなく、技術者が積極的にマーケティング活動に参加しやすい雰囲気を作り出す。
ただし、1回で時間をかけすぎないように、小さい質問を数回に分けて行うことが大切である。
(3)会議への技術者の参加促進
技術者を会議に参加させることは、単に技術的な視点を取り入れるだけでなく、彼らにマーケティングの仕事をより深く理解してもらい、自分の業務として捉えてもらうための重要なステップになる。
会議の場での質問やディスカッションを通じて、技術者はマーケティングの課題や目的に直接関与でき、その結果、技術者自身がマーケティング活動により積極的に参加し、協力的な態度を持つようになることが期待される。
このような取り組みにより、技術者はマーケティングの戦略や方針を自分のものとして受け入れ、その実現のための技術的な提案や意見を積極的に提供するようになる。結果として、技術とマーケティングの連携が強化される。
(4)プレゼン資料に技術者のチェックを入れる
プレゼン資料の作成時に技術者に内容のチェックを依頼することは、単に技術的な正確性を確保するだけでなく、技術者がマーケティングの活動を自分の業務として深く関与するきっかけとなる。技術者が資料の内容を確認し、フィードバックを提供する過程で、マーケティングの目的や戦略に対する理解が深まり、自らの専門知識を生かしてより具体的な提案や改善点を提供してもらえるようになる。
このような取り組みを通じて、技術者はマーケティングの仕事を自分のものとして捉え、その成功のために積極的に協力する姿勢を強化することが期待される。
(5)技術者は歩み寄りを、営業職は質問を
技術者の歩み寄りは、マーケティング活動の成功にとって非常に重要な要素である。技術者が営業職やマーケティング部門との協力に消極的であると、その技術的な深みや独自性を十分に伝えることが難しくなる。技術者が持つ専門知識や視点は、製品やサービスの競争力を高めるためのカギとなるため、その役割は極めて大きい。
そのため、技術者には営業職とのコミュニケーションにおいて、積極的な歩み寄りの姿勢が求められる。この歩み寄りは、単にコミュニケーションを円滑にするだけでなく、技術者自身がマーケティング活動の一部として自らの役割を理解し、その成功に貢献する意識を持つことが大切である。
一方、営業職は技術者の専門知識を深く理解し、適切な質問を通じてその知識を活用することが重要である。技術者の歩み寄りと営業職の質問の双方が組み合わさることで、企業全体のマーケティング活動がより効果的に進展する。
まとめ
コロナ禍を経て、製造業のデジタルマーケティングが加速しているが、実践している企業は限られる。特に、技術者のマーケティングへの参加の重要性が強調されている。技術者は製品や技術の深い理解を持ち、具体的なデータや差別化の要点を提供できるため、マーケティングの質を向上させる鍵となる。
しかし、技術者がマーケティングに参加する障壁も存在する。その理由や解決策を提案し、技術者と営業職の連携とコミュニケーションの強化が、効果的なマーケティング活動の進展に不可欠であることをお伝えした。
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筆者紹介
永井満(ながい みつる)
テクノポート株式会社 Webマーケティング事業部 名古屋オフィス責任者
日本大学大学院(航空宇宙工学専攻)を卒業後、新卒で入社したボッシュ株式会社にてディーゼルエンジンの設計職を経験した後、テクノポート株式会社へ入社。現在はWebマーケティングコンサルタントとして、中小企業から大手製造業まで幅広い企業のクライアントを担当。技術の魅力を伝えることにこだわったマーケティング支援を心掛けている。
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