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技術者なしのマーケティングはあり得ない! 巻き込みに必要な考え方間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(8)(2/3 ページ)

コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。

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マーケティングに技術者が必要な具体的な理由

 「参加したくないならしなくてもよい」と感じる人もいるかもしれない。しかし、技術者の負担が増えることを考慮しても、やはりマーケティングには技術者の力が必要なのである。その理由を深掘りする。

(1)製品のコンセプトを最も理解している

 技術者は製品の開発者であり、製品の背景、コンセプト、競合との違い、前バージョンからの進化など、製品の全てを深く理解している。技術そのものを製品のアピールポイントとしたい場合、その技術の詳細を最も知っているのは技術者だ。

 マーケティングの鍵は、「自社の製品や技術の特長を完全に把握し、競合との比較での優れた点を明瞭に伝える」ことである。そのため、効果的な提案を作成するには技術者の協力が不可欠である。技術者のサポートがなければ、提案は不明確になり、顧客を納得させることは難しくなるだろう。

(2)技術的差別化ポイントを数値で答えられる


試験結果を示すグラフ[クリックして拡大] 出所:高木特殊工業

 「数値」は技術の優越性や差別化を示す上で非常に重要な要素となる。競合製品やサービスとの比較では、単に「優れている」と言うだけではなく、具体的な数値で「どれだけ優れているのか」を示すことが求められる。例えば、競合製品より性能が10%高い、以前より耐久性が20%向上したなど、数値を用いることで相手に対して情報が明確かつ具体的に伝わる。

 また、使用環境や条件が変わった場合の性能変動も数値で示すことができれば、その製品や技術の信頼性や安定性を具体的にアピールできる。グラフや表を用いてこれらの情報を視覚的に示すことで、さらに伝わりやすくなる。

 技術者が持つ詳細なデータや実験結果は、このような数値に基づく情報提供の基盤となる。正確な数値は、客観的な評価や判断の材料として、相手にとって非常に価値がある。そのため、技術者とマーケティングチームが連携し、正確で魅力的な数値情報を提供することが、成功の鍵となるだろう。

(3)利用用途を幅広く知っている


技術の使用例を幅広く引き出せる[クリックして拡大] 出所:グリムファクトリー

 製品には特定の利用シーンが存在し、それに基づけば具体的な提案が行いやすい。一方、技術の魅力を伝える際は、その利用シーンが1つに限られないため、提案が難しくなることがある。

 例として、摩擦を低減するめっき技術を考えると、高速回転での潤滑油の代替やボルトのかじりの防止、ベアリングの接触部分の改善など多岐にわたる応用が考えられる。このような技術を顧客に提案する際、顧客のニーズに合わせた利用シーンをどれだけ提供できるか、また、顧客がまだ考えていない新しい利用シーンを示せるかがキーとなる。

 ここで、技術者の役割が極めて重要となる。技術者はその技術の核心を深く理解しているため、顧客の要望に応じて多様な利用シーンを提案する能力を持つ。高品質な提案を行うことで、顧客からの信頼を獲得しやすくなり、ビジネスチャンスを増やすことができる。

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