富士通の次世代プロセッサ「MONAKA」は競合比2倍の電力効率、2027年度に投入:組み込み開発ニュース
富士通が2027年度内の市場投入に向けて開発を進めているデータセンター向けプロセッサ「FUJITSU-MONAKA」について説明。「京」や「富岳」で培った技術を基に、Armアーキテクチャや台湾TSMCの2nmプロセスなどを用いて、競合比2倍となる電力効率や高速処理の実現を目指す。
富士通は2023年10月11日、同社川崎工場(川崎市中原区)で開催したメディア/アナリスト向けの研究戦略説明会において、2027年度内の市場投入に向けて開発を進めているデータセンター向けプロセッサ「FUJITSU-MONAKA」について説明した。スーパーコンピュータの「京」や「富岳」で培った技術を基に、Armアーキテクチャや台湾TSMCの2nmプロセスなどを用いて、競合比2倍となる電力効率や高速処理の実現を目指す。
AI(人工知能)とDX(デジタルトランスフォーメーション)の急速な進化によってデータ量が爆発的に増大する中で、クラウドやデータセンターの電力消費量の増加によってCO2排出量も増加し、地球温暖化が進行することが懸念されている。富士通 先端技術開発本部長の新庄直樹氏は「2030年に世界中で扱われるデータ量は2020年の10倍に達すると予測されており、その後も爆発的な増大が続くとみられている。データ量の増大とともに大規模データセンターの需要は拡大するが、そこでの電力消費を抑えなければカーボンニュートラルの実現は困難だ」と語る。
FUJITSU-MONAKAは、データセンターの電力効率を飛躍的に向上するとともに、AIやDXに求められる高速なデータ処理を追求するべく開発が進められている、次世代高性能/省電力プロセッサである。スーパーコンピュータの京や富岳で培ったマイクロアーキテクチャ、低電圧技術など富士通の独自技術を基に、Armの最新プロセッサアーキテクチャ「Armv9-A」、TSMCの2nmプロセス、チップレットを用いた3次元実装技術などを組み合わせて開発を進めている。プロセッサのコア数は約150で、メモリはDDR5、外部インタフェースはPCI Express 6.0(CXL 3.0)をサポートし、冷却システムは空冷を可能にするという。
FUJITSU-MONAKAは開発目標として4つのゴールを掲げている。1つ目は「省電力とパフォーマンスの両立」で、競合比2倍の高い電力効率によるCO2排出量と電力コストの削減を目指す。2つ目は「高速なデータ処理基盤」で、AIワークロードを中心としたコンピューティングで競合比2倍の高速処理が目標となる。3つ目の「信頼性とセキュリティ」では、メインフレームで培ってきた安定稼働技術による信頼性に加えて、Armv9-Aで導入される新たなセキュリティ機能「CCA」を用いたConfidential Computingによってセキュリティも確保する。4つ目となる「使いやすさ」では、同じくArmアーキテクチャをベースとする富岳と同様に、Armのソフトウェアエコシステムを活用して幅広いオープンソースソフトウェアを利用可能としていく考えだ。
なお、“ポスト富岳”とされる次世代スパコンについては2030年ごろを目指して調査研究が進んでおり、FUJITSU-MONAKAそのものが採用されることはない。ただし、この調査研究には理化学研究所の下で富士通も参加していることから、FUJITSU-MONAKAの一部技術が盛り込まれる可能性がある。
また、2027年度の市場投入を目指すFUJITSU-MONAKAの製造はTSMCの2nmプロセスで行われる。国内で2nmプロセスの半導体生産を目指すRapidus(ラピダス)も量産時期を2027年としているが、2027年度の市場投入に合わせて150コアに上る極めて複雑なFUJITSU-MONAKAの半導体設計を進めていくためには、富岳のプロセッサ量産で実績もあるTSMCが開発している2nmプロセスが最適だとしている。
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