NTTが光電融合デバイスの専門企業を設立「自動車やスマホにも光通信を広げる」:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
NTTグループで光電融合デバイスを手掛けるNTTイノベーティブデバイスが同社設立の背景や事業方針などについて説明。光電融合デバイスの適用領域を通信からコンピューティングに広げることで、早期に年間売上高1000億円の突破を目指す。
光電融合デバイス開発のロードマップ
なお、NTTイノベーティブデバイスが手掛ける光電融合デバイスとしては、NTTエレクトロニクスが供給してきた第1世代に当たる「COSA(Coherent Optical Sub-Assembly)」と、2023年に商用化したばかりの第2世代に当たる「CoPKG(光・電子コパッケージ)」がある。
COSAでは、押野氏が挙げる光電融合デバイスを構成するキーデバイスの内、アナログICとシリコンフォトニクス変調素子が一体になっており、ロジックICと薄膜レーザー素子は外付けになっている。CoPKGでは、COSAからさらに一歩進んでDSPの一体化まで実現できている。デバイスの外形寸法はCOSAの13.5×10.5×2.2mmから、CoPKGは11.5×21.1×3mmと大きくなっている。COSAもCoPKGも、基本的には従来の用途である通信向けのデバイスとなる。
2025年に商用化を計画しているのが「光エンジン」と呼ぶ第3世代デバイスである。一般的なデバイス開発のロードマップでは、世代が進むごとに小型化や高機能化が進むが、光エンジンの外形寸法はCOSAやCoPKGよりもはるかに大きい20×50×7mmとなっている。これは、光エンジンの用途がデータセンター内でサーバ間をつなげる光通信スイッチを向けに適用することが想定されているからで、ロジックICとアナログIC、シリコンフォトニクス変調素子だけでなく、光ファイバーと接続するための構造部品であるFAU(Fiber Array Unit)も一体化しているためだ。消費電力については、CoPKGと比べて半減することを想定している。
2028年の商用化を想定する第4世代デバイスでは、ロジックIC、アナログIC、シリコンフォトニクス変調素子だけでなく、薄膜レーザー素子も一体化される。第4世代デバイスは半導体パッケージ内に組み込まれ、プリント基板上に実装されるプロセッサやメモリなどICの間を光通信でつなげる「半導体パッケージ間通信」に利用される見込みだ。外形寸法は5×10×3mm。また、チップレットとして提供する場合には、顧客の要望に合わせてロジックICであるDSPの機能は光電融合デバイス側に組み込まない可能性もある。
そして、2032年に商用化を見込む第5世代デバイスは、半導体パッケージ内部における電気信号のやりとりを光信号に置き換える「半導体パッケージ内通信」に利用されることを想定している。外形寸法は2×5×2mmとなっている。
塚野氏は「売上高が1000億円を突破するのは、第3世代デバイスの光エンジンの量産が軌道に乗るころだろう。第4世代デバイス以降は、光電融合デバイスをより薄く小さく安くしてPCやスマートフォンなどの民生機器向けにも採用してもらえるようにしたい。コンピューティングを超えて次の段階に行く上で重要なのが自動車向けだと考えている。現在の電気信号を用いているワイヤハーネスを光信号に置き換えることで、大幅な軽量化や小型化が図れるだろう」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- NTTが光電融合技術の開発を加速、1Tbpsでチップ間光伝送が可能な光電変換素子も
日本電信電話(NTT)は、「NTT R&Dフォーラム2020 Connect」において、同社が推進する光ベースの革新的ネットワーク構想「IOWN(アイオン)」を構成する先端デバイス技術を披露した。 - NTTが1波長当たり光伝送で世界最大容量の1.2Tbpsを実現、伝送距離の拡大も
NTTは、1波長当たり1.2Tbpsの光伝送を実現するデジタルコヒーレント信号処理回路と光デバイスを開発したと発表。これまでは1波長当たりの容量は800Gbpsが最大だったため「世界最大」(同社)を実現した。800Gbpsの光伝送距離を2倍以上に拡大することにもつなげられるという。 - 圧縮なしで8K映像を即時伝送、NTTが次世代通信網「IOWN1.0」提供開始へ
NTT東日本とNTT西日本は2023年3月2日、NTTグループが構想する光ベースの技術によるネットワーク構想「IOWN」の商用化サービス第1弾として「APN IOWN1.0」の提供を同月16日から開始すると発表した。 - NTTがIOWN初のサービス実用化へ、光回線で従来比200分の1の低遅延通信を実現
NTTは2022年11月14日、光ベースの技術によるネットワーク構想「IOWN」について、サービス第1弾として「IOWN1.0」を2023年3月から提供開始すると発表した。 - グラフェンの光検出器としての有望性を実証、ゼロバイアス動作で世界最速を実現
日本電信電話(NTT)はNIMS(物質・材料研究機構)と共同で、炭素原子だけで構成されるシート状物質のグラフェンを用いた光検出器で世界最速のゼロバイアス動作を実現するとともに、グラフェンにおける光-電気変換プロセスを解明したと発表した。 - NTTと富士通が光電融合デバイスの開発で提携「IOWN構想でゲームチェンジ」
NTTと富士通が「持続可能な未来型デジタル社会の実現」を目的とした戦略的業務提携に合意したと発表。同提携では「光電融合製造技術の確立」「通信技術のオープン化の推進」「低消費電力型・高性能コンピューティング実現に向けた共同研究開発」を進める。