日立が製造業向けDXソリューションを体系化しハイブリッドクラウドで提供へ:製造ITニュース
日立製作所は、製造業の設計や製造にとどまらない幅広い業務のDXをワンストップで支援する各種サービス群およびクラウド基盤を「製造業向けDXクラウドソリューション」として新たに体系化した。
日立製作所(以下、日立)は2023年9月4日、製造業の設計や製造にとどまらない幅広い業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)をワンストップで支援する各種サービス群およびクラウド基盤を「製造業向けDXクラウドソリューション」として新たに体系化し、同月から提供を開始したと発表した。日立が製造業として培ってきた知見やノウハウを基にデジタルソリューションとして展開してきた多種多様なサービスをハイブリッドクラウド運用サービスである「ComiComiCloud」を基盤として、大手にとどまらず中堅中小に至るまで国内製造業に向けて提供していく考えだ。
今回発表した製造業向けDXクラウドソリューションは、エンジニアリングチェーン、サプライチェーン、設計や製造、物流にとどまらないコーポレート機能も含めた部門横断業務という3つの領域に向けたDX支援のソリューションを体系化している。そして、これらをComiComiCloud上で構築することにより、これまで個別最適されてきた各領域の連携を深めて全体最適を可能とする狙いがある。
1つ目の領域となる「エンジニアリングチェーンのためのDX支援サービス」は、これまで「日立クラウド型設計業務支援サービス(DSC/DS)」としてきたサービスが中心で、モノづくりのECM(エンジニアリングチェーンマネジメント)とSCM(サプライチェーンマネジメント)をシームレスに連携させ、製造現場の品質情報とメンテナンス情報を設計にフィードバックするプロセスを確立することにより、設計段階での不良を抑止し、製品の品質や作業効率を向上できる。
例えば、設計業務関連では、セキュリティの確保されたクラウド環境上の仮想デスクトップを用いて設計業務などを行える「3次元仮想デスクトップ」や、3D CAD上であらかじめ登録しておいた設計ルールに違反していないかをチェックし、チェックの工数削減や漏れ防止、手戻り/設計不良/設計変更の低減を実現する「気付き支援CADシステム」、業務手順を階層化しノウハウや過去データを関連付けて表示することで作業の時間削減と品質平準化を可能にする「業務ナビゲーションシステム」、設計/製造からの不良や問題点など品質情報のデータベースを解析/学習したAIにより新たに発生した問題解決の関連情報を検知/把握できるようになる「文書活用促進ソリューション」などがある。また、業務ナビゲーションシステムと文書活用促進ソリューションの組み合わせにより、標準化された業務手順を遂行し、製造からフィードバックされた品質情報を参考にしながら、標準化されたプロセスに従った効率的な設計を進めることも可能になる。
これらの他、3D CADデータから3Dの組み立て手順書を自動生成し、熟練者と若手の技能差の縮小と手順書作成における生産性を向上する「組立ナビゲーションシステム」、プロジェクト関係者間で開発工程の計画/進捗、作業負荷状況を可視化し、円滑なプロジェクト推進およびプロジェクトの先手管理を実現する「開発日程管理サービス」も提供している。
2つ目の領域である「サプライチェーンのためのDX推進支援サービス」は、SCMの起点となる計画策定業務に向けたもので、日立が1990年代から展開してきたサプライチェーンプラニングサービス「SCPLAN」と、2018年に食品業界向けに立ち上げ、その後組み立て製造業向けにも展開してきた「計画系業務最適化サービス」から構成されている。
SCPLANは、日立が独自開発した高速MRP(資材所要量計画)エンジンを活用して生産計画の立案と変更の支援が可能で、高速計算に加え飛び込みの受注や急な欠品などのさまざまな計画変更要因に対して影響範囲を高速に分析して再計算範囲を限定できるため、問題点の解消に向けた反復計算にも容易に対応できるなどの特徴がある。これまでに海外45サイトを含めた170サイトで採用されている。一方、計画系業務最適化サービスは、計画業務における制約条件やKPI(重要業績評価指標)をAIにセットアップした上で、供給計画や商品情報など計画に必要なデータを入力することで、膨大な組み合わせの中から素早く最適な計画を自動で立案する機能がある。
3つ目の領域となる「部門横断業務のためのDX推進支援サービス」は、主に設計部門向けに展開してきた業務ナビゲーションシステムと文書活用促進ソリューションを一般業務にも適用し全社的なワークスタイル変革につなげることが狙いとなっている。
ComiComiCloudは、顧客の指定場所に設置した日立資産のサーバ上にその顧客が占有するプライベートクラウド環境を構築し、運用/保守は日立が担う従量課金型プライベートクラウドサービスである。2023年8月には、「AWS」や「Azure」といったパブリッククラウドや顧客のオンプレミスサーバなども運用/保守の対象とするComiComiCloudのハイブリッドクラウド運用サービスを発表しており、今回の製造業向けDXクラウドソリューションでも利用可能となっている。
なお、製造業向けDXクラウドソリューションについては、日立のプライベートイベント「「Hitachi Social Innovation Forum 2023 JAPAN」(2023年9月20〜21日、東京ビッグサイト)で展示する予定だ。
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