2025年、“シン・無人運航船”出現:船も「CASE」(2/4 ページ)
日本財団は無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」の第2ステージ事業に関する説明会を実施した。日本財団が中心となって2020年6月から2022年3月にかけて進めてきた無人運航船開発プロジェクト第1ステージの成果を受けて、2022年10月から第2ステージに着手している。
第2ステージの技術面における活動内容では「完全自動運航が一部可能なレベル=自動運転レベル4相当」を目指すという。そのためには特に重要な4項目として「避航動作を含む輻輳海域での自動操船」「自動離着桟と係留技術の確立」「遠隔からの複数船舶の同時支援」「より安定的な船陸間通信の確保」を掲げている。それぞれの項目ではステージ1の実証実験で得たフィードバックを反映して、より完成度の高い自動運航を目指す。
「第1ステージは輻輳海域で実証実験を成功させた。ただ、細かく不規則に動く船舶の対応では課題が残っており、より熟練者の操船に近い避航航路制御を第2ステージでは目指す。自動離着は第1ステージで小型船舶が成功させたのを中大型船舶でも実証する。遠隔操船では兵庫県西宮の古野電気本社に陸上支援センターを新設して複数船舶を同時に制御する。また、キャンピングカーを改造した移動式陸上支援センターも用意して、災害時の緊急対応も可能となるシステムの構築を検討する」(海野氏)
海野氏が「今1番大事なところ」と述べるのが無人運航の実現に向けたルールの規制緩和や国際基準化だ。国際ルール策定の最高機関ともいえるIMO(国際海事機関)による策定作業は2028年とされており、第2ステージの目標実現時期と設定した2025年は、国際ルールとそれに準拠した各国の国内ルールは調整中の段階にある。そのため、海野氏は「規制緩和手法を活用しながら継続的な社会実装に向けて(ルールの調整を)進めていきたい」と見通しを示している。「国土交通省、海上保安庁、内閣府などの協力とアドバイスを踏まえながら、構造改革特区制度の活用や国内にあるサンドボックス制度の活用なども検討してみたい」(海野氏)
第2ステージの実証実験で現在対象となっているのは、離島航路船「おりんぴあどりーむせと」(全長65m、実証実験リーダー企業:日本海洋科学)、コンテナ船「みかげ」(全長95m、同商船三井)、RO-RO船「第2ほくれん丸」(全長173.8m、同川崎汽船)、そして新造コンテナ船(予定全長126.8m、同MTI)の4隻だ。
第2ステージの実証実験では、大型貨物船による最長9カ月にも及ぶ長期間実験や、陸上支援センターからの複数船舶を対象にした遠隔支援など、第1ステージよりも実用段階に近い状況で実施する。
なお、新造コンテナ船を用いる実証実験では、自動運航に必要な機材を最初から組み込むことができるため、既存船舶の改造ではできなかった機関の自動制御や遠隔制御が可能になる他、遠隔操船に必須となる船陸間データ通信もより強固なセキュリティとより高速な転送ができるインフラを搭載できるようになるという。
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