純金純銀のジュエリーを1つずつ手作り、大量生産が難しい素材をあえて使う理由:ワクワクを原動力に! ものづくりなヒト探訪記(7)(3/5 ページ)
本連載では、厳しい環境が続く中で伝統を受け継ぎつつ、新しい領域にチャレンジする中小製造業の“いま”を紹介していきます。今回はジュエリーブランド「four seven nine」を取り上げます。
「装う彫刻」をつくりたい
――吉田さんは幼少期にどんなことをして遊んでいましたか?
吉田さん 時計やラジオの分解をしたり、プラモデル作りをしたりしてよく遊んでいました。 家族旅行にあまり行きたくなかったとき、「プラモデル買ってあげるよ」の一言で旅行についていく子どもでした。
――大学卒業後に進学した専門学校ではどんなことを学ばれていたのですか?
吉田さん グラフィックデザイン専攻で、ポスター、プロダクトデザイン、パッケージデザインなどを学びました。それに加え、「装う彫刻」を作りたいと思い、彫金教室にも通っていました。
――専門学校卒業後はどんなお仕事をされていたのですか?
吉田さん 初めはブックカバーデザイナーという、本をデザインする仕事をしていました。書籍や雑誌のデザインと並行して金属彫刻を作りたいと思ったのが彫金教室に通っていた理由の一つです。
――どのようなきっかけでジュエリー制作をされることになったのですか?
吉田さん 最初は金属彫刻を作りたいと思い、彫金教室に通いました。教室でほとんどの方がジュエリーを作っていたことから、ジュエリーは身に着けることのできる小さな彫刻だと気付き、そこから抽象的なジュエリー制作にはまっていきました。
個展、グループ展を毎年のように開催し、オーダーでマリッジリングやエンゲージリングも作っていました。ある時、「飼っている犬の指輪を作って欲しい」と言われました。それまで抽象的なデザインを手掛けることが多かったのですが、試行錯誤して作ったらとても喜んでもらえました。
そのリングの出来を見た妻に「ジュエリーブランドを立ち上げようよ!」と言われ、2005年に「SEVENLYSEVEN」というfour seven nineの前身である姉妹ブランドをはじめました。
若い世代向けのピュアな素材にこだわるブランド
――four seven nineとSEVENLYSEVENは制作においてどのような違いがあるのですか?
吉田さん SEVENLYSEVENはSV925を使用していたので、制作途中で発生してしまう表面の酸化銅を磨く必要がありました。four seven nineは純銀を磨く必要がほとんどなく、あたためて銀の太さや形を変えるところからスタートできるという点では、制作時のストレスが少ないです。
――SEVENLYSEVENの始まりから13年後、four seven nineが生まれたのはどのようなきっかけがあるのですか?
吉田さん 伊勢丹新宿店でSEVENLYSEVENのポップアップを開催していた際に、伊勢丹の担当者の方に「もう少し若い世代向けの商品は作れないか?」と声を掛けられました。というのも、伊勢丹のその売場自体がSEVENLYSEVENがターゲットにしていた人たちより若い年齢層向けだったのです。
それなら若い世代に向けた新たなブランドを作りたいという話をしたところ、「まずは20種類試作を見せて欲しい」と言われ、すぐに制作に取り掛かりました。素材は自分達が欲しかった、純銀でできたジュエリー。その試作品を担当者の方に高く評価していただき、ピュアな素材にこだわったブランドとしてfour seven nineが生まれました。
――ジュエリー制作のどんな部分にやりがいや幸せを感じますか?
吉田さん 手を動かして、何かを自分で生み出せることに大きな幸せを感じます。それだけではなく、ポップアップに実際に足を運んでくださった方に自分が制作したジュエリーをお届けし、喜んでいただけることにも大きなやりがいを感じます。
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