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設計者なら知っておきたい! デザイナーの要求をかなえる加工技術10選[前編]設計者のためのインダストリアルデザイン入門(6)(2/4 ページ)

製品開発に従事する設計者を対象に、インダストリアルデザインの活用メリットと実践的な活用方法を学ぶ連載。今回は設計者が押さえておきたいデザイナーの要求をかなえる加工技術10選のうち、頻出する5つの加工技術を[前編]として紹介する。

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2.装飾用メッキ:金属部品

クロムメッキが施された水道蛇口のイメージ
クロムメッキが施された水道蛇口のイメージ[クリックで拡大] 出所:iStock/Okea

 「メッキ」は金属表面に金属を被覆する方法で、耐摩耗性や耐腐食性を向上させるだけでなく、金属表面に光沢をもたせ、高級感を出すことができる加工技術です。中でも、製品の装飾用途で使用されるものを「装飾用メッキ」といいます。装飾用メッキの中でも頻繁に使用されるのは「クロムメッキ」で、他には、金やニッケルメッキなどが使用されます。クロムメッキが施された身近な製品としては、水道蛇口、自動車部品、室内インテリアなどが挙げられます。なお、装飾用メッキの他に、硬度や摩耗性を上げることを目的に行う「硬質メッキ」があります。

 ここでは、特にクロムメッキの加工方法や特徴について解説します。クロムメッキ加工の工程は、材質や仕様目的により異なりますが、大きくは「前処理」「本処理」「後処理」の工程で行われます。前処理では、対象となる金属表面を洗浄(脱脂)した上で酸で表面を活性化します。これにより、クロムが適切に密着するための良好な表面状態が得られます。本処理では、電解液の中に金属を浸します。この液体に電流を流すことで、ニッケルおよびクロムが金属表面に均一に被覆されます。後処理では、必要に応じでバフ研磨を施すことで表面の光沢感を増し、光反射性や熱反射性を高めます。

 きらびやかで見た目には優れているクロムメッキですが、触ったときに指紋が付きやすいという特徴があります。従って、使用者が頻繁に触れるような場所に適用する際には留意が必要です。また、大きな面に使用する場合には面のゆがみや傷が目立ちやすく、歩留まりが悪くなるため、品質を要求する加工範囲も必要最低限にすることを勧めします。

 なお、費用はメーカーが所有している設備の大きさ(一度にどれだけの部品を加工できるのか)やメッキする対象の母材(どんな前処理が必要か)などによって変わりますので、適宜確認が必要です。

3.プラスチックメッキ:樹脂部品

 クロムメッキの次に紹介したいのが「プラスチックメッキ」です。一般的なメッキは金属部品の表面に光沢感のある表現を再現するものでしたが、プラスチックメッキはその名の通り非導体である樹脂成形品に対してメッキを施す技術です。樹脂部品の表面にも金属部品へのメッキ同等の光沢感を再現することが可能です。

 クロム以外にも、金、ニッケルなどのメッキが金属同様に可能であり、サテン調やカラーメッキなど、さまざまな表現も実現できます。これら、メッキのバリエーションは驚くほど多くありますので、メーカー各社のサンプルを手元に置いておくとよいでしょう。

 プラスチックメッキは部品洗浄後にエッチング処理と無電解メッキを施します。ここで行うエッチング処理は、酸やアルカリなどの薬液の腐食作用(溶かす作用)を利用して、素材表面をあらし、次工程の表面処理を付きやすくするものです。エッチング処理後、ニッケルや銅などの無電解メッキを行い、樹脂部品に導電性を付与します。その後は金属部品に行う電気メッキと同様のメッキ処理を行います。

 プラスチックメッキを利用する際にはいくつかの留意点があります。まず、装飾用途のプラスチックメッキはABS樹脂、PC-ABS(ポリカABS)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂などに限られている場合が多く、対象とする樹脂部品の材質の確認が必要です。

 次に、メッキ処理の際、部品を治具に固定するための固定点が必要となります。固定点付近はメッキが施されなかったり、変形してしまったりする可能性があるので、固定点の位置が外観にならないようにするなどの配慮が必要です。また、外観の品質管理の観点では、隅にはメッキがのりづらく、エッジにはメッキがのり過ぎてしまうという特性があります。従って、量産前に外観品質の要求を定めた上で、事前にメーカーと形状確認を行うことをお勧めします。

 なお、費用はクロムメッキと同様にメーカーの所有する設備に依存するため、こちらも適宜確認が必要です。基本的に塗装などよりは高価であり、特殊な表現を使用すればするほど工程が増えるため値段も上がる傾向にあります。

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