「安全関連システム」とその基本構成、2種類の故障について知ろう:これだけは知っておきたい機能安全(3)(4/4 ページ)
さまざまな産業機器の開発で必要不可欠な機能安全について「これだけは知っておきたいこと」を紹介する本連載。最終回となる第3回は、安全関連システムとその基本構成、機能安全における2種類の故障、機能安全マネジメントなどについて説明する。
責任と権限の分担を明示する「機能安全マネジメント」
安全マネジメントに関しては、ISO 9001にも類似の内容が記載されています。しかし、ISO 9001の安全マネジメントと機能安全マネジメントには違いもあります。その違いを知ることが機能安全マネジメントの理解に役立ちます。
機能安全マネジメントとISO 9001で大きく異なるのは、責任と権限の分担が明示されているところにあります。機能安全マネジメントはルールや責任の所在が明確になっています。また、機能安全マネジメントに関わる人員には、その役割に応じたコンピテンシー(資質や能力)の証明も求められています。
機能安全マネジメントの全体的な構成は以下のようになっています。
機能安全マネジメントでは、まず組織全体の責任者、プロジェクトの責任者、各業務の責任者を決めます。そして、機能安全の専門知識を有する機能安全管理者を決定します。この機能安全管理者は、プロジェクトの責任者から独立し、プロジェクトの責任者と同格の地位を有します。また、機能安全管理者は、機能安全アセッサーと機能安全監査者を決定します。
機能安全アセッサーは、機能安全の専門知識を有する品証部や機能安全の外部支援者が担当し、対象製品の機能安全の達成をアセスメント(評価)します。機能安全アセッサーは組織の責任者や設計開発者ではなく、独立した立場で評価を行うのが特徴です。
この他、機能安全監査者も置かれます。機能安全監査者は、監査業務を実施し、各プロセスにおける不備を指摘する業務を担います。機能安全監査者には、機能安全の全体プロセスを理解する能力と、独立性が要求されます。また、機能安全監査者は独立性の観点から、責任者や設計開発者は担当しません。ちなみに、機能安全監査者には品証部や機能安全の外部支援者が担当するのが一般的ですが、機能安全アセッサーが兼務しても良いことになっています。
本連載では、さまざまな産業機器の開発で必要不可欠な機能安全について「これだけは知っておきたいこと」を3回にわたって紹介してきました。何かと難しいものと捉えられがちな機能安全に対応した開発をスムーズに進めるためには、連載で紹介していた事柄を開発に関わる全ての技術者が知っておく必要があります。本連載を機に機能安全に関する知識を深めて、より良い産業機器を市場に投入する一助としていただければと思います。(連載完)
筆者プロフィール
株式会社セーフティイノベーション(SIL)
東京都町田市に2015年に設立し、主に機能安全設計に関するコンサルサービスを提供する会社(社長:佐藤市太郎)です。産業機器のハード/ソフト開発および機能安全設計の実務経験、知見を生かし、機能安全認証取得を効率よく推進するプロセス、ノウハウの提供、設計実務支援などのサービス業務を行う各産業分野で認証実績のある技術者集団です。国内企業の機能安全規格への準拠を支援するFSEG(Functional Safety Expert Group)の一員として、設立当初から機能安全を通して日本のモノづくりを支援する活動に参加しています。
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