製造業の生成AI活用に3つの道筋、製造現場などでの活用事例を探る:製造現場向けAI技術(3/4 ページ)
最も大きな注目を集めるワードの1つである「生成AI」。製造業ではどのように役立てられるのだろうか。活用事例を幾つか取り上げるとともに、製造現場などでの活用事例を探る。
業務に寄り添う「AIアシスタント」の実現も
ChatGPTの全社的な活用を推進する流れも起きている。製造業領域でいち早くChatGPTの全社導入を決めた企業がパナソニック コネクトだ。同社はChatGPT公開に先立つ2022年10月からGPTの活用を検討し始め、2023年2月に「ConnectGPT(現在はConnectAIに改称)」を開発し、国内全社員が利用できるよう社内導入を実現した。マイクロソフトが提供する「Azure OpenAI Service」に必要な機能を追加する形で開発した。
現在ではConnectAIをベースにした「PX-AI」がパナソニックグループで展開されており、国内グループ9万人の社員が利用している。導入の目的について、パナソニック 執行役員 グループCTOの小川立夫氏は「AIをツールとしてどう使いこなしていくか。これはAI開発のみならず、業務そのものの改革でも非常に重要だ。生成AIを巡るさまざまな規制が整備されていくと思うが、その中でも(ツールとして)適切に使えるようにする。今はその仕込み期間だ」と語る。
ConnectAIの導入から3カ月程度が経過した時点で、累計利用回数は約26万回に達した。1日当たりの利用回数は約5000回と、「導入当初の想定利用数の5倍以上」(パナソニック コネクト IT・デジタル推進本部 戦略企画部 シニアマネージャーの向野孔己氏)利用されているという。
利用用途としては業務上の質問などを投げることが多いようだ。回路設計の知識を尋ねるものや、特定条件を満たす樹脂材料を列挙してほしいといった技術的な質問を投げる例もある。また、「360度カメラの映像をLTE回線で映像伝送し、遠隔地でVR(仮想現実)ゴーグルで利用するシステムの使用用途を挙げてほしい」といったビジネス領域の質問も寄せられているという。エンジニアだけでなくマーケティングなど職種を問わず多くの社員が利用しているようだ。
さらにパナソニック コネクトは、ConnectAIと社内データベースを連携させて、その有効性を検証するプロジェクトを推進している。Webなどで対外的に公開済みの自社情報をデータベースに格納し、それに基づく回答を生成するシステムを構築する。2023年9月から試験運用を開始する予定だ。最新情報に基づいた回答生成が困難な点がChatGPTの課題の1つだが、これを一定程度解決する効果が期待できる。
データベースに格納するデータによっては、自社業務や現場の個別課題に対応した回答生成が可能になり得る。同社では社外秘情報にも対応する自社特化AIを2023年度内に、個々人の職種や役割に応じた個人特化AIを2024年度以降にそれぞれ運用開始する予定だ。
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